スクールロイヤーの「半常駐」で学校に起きた変化 琉大附属中「チーム学校」で問題を未然に防ぐ
城間教諭も公立校にいた経験を踏まえ、スクールロイヤーがチーム学校の一員として関わることが望ましいと考えている。
「幸い本校では経験がありませんが、教育現場では、児童相談所や警察、市役所の福祉課や児童課につなぐべき事案が出てくる場合があるので、どの学校でもスクールロイヤーと話せる場があるといいと思います。多くの公立校も生徒支援委員会のような会議が定期的に開かれているはずなので、まずはそこにスクールロイヤーが参加する機会ができるとよいかもしれません」
スクールロイヤー活用の仕組みについて、武田教授も次のような提案をする。
「沖縄県で行ったアンケートでは、スクールロイヤーは必要ないという回答も多かったのですが、それはスクールロイヤーがどういう存在なのか知らないからだと思います。例えば試験校として、ある学校に1カ月くらい常駐でスクールロイヤーを関わらせてみる。その成果を広めていくことで、スクールロイヤーの機能や役割が理解され、活用につながっていくのではないかと思います。対価を受け取らなくてもスクールロイヤーをやってみたいという弁護士は意外といるので、公立でも予算を気にせずトライできるのではないでしょうか」
一方、スクールロイヤーも学校現場をよく理解していないのが現状だ。スクールロイヤーを担当しても、学校にとって有効な助言や提案ができるとは限らない。だからこそ、スクールロイヤーが学校現場に関わることは、双方の理解を深めるうえでもメリットになるといえそうだ。実際、武田教授は「毎週顔を合わせることで、先生方が抱える悩みを知ることができるようになりました」と話す。
吉田教授も、次のように期待する。
「附属学校には、最先端の教育実践研究を行う先進研究校と、地域に成果をフィードバックするモデル校という役割があります。本学附属中の先生方は公立校との人事交流でいらっしゃっているので、公立校にお戻りになった際にここでの経験が生き、スクールロイヤーの活用もいい方向に進むのではないでしょうか」
ただ、「今後、生徒や保護者から直接相談があった場合、どう対応していけばよいのか。学校内での利益相反は課題です」と、武田教授は漏らす。学校現場に適切に助言できる人材の育成も課題で、琉大法科大学院では、琉大教職大学院と連携してスクールロイヤーの養成もスタートさせている。講義形式の「子どもの教育と法」は、2021年度後期に授業科目として実施。法科大学院の学生が附属学校の現場を訪問して臨床的な実習を行う「スクールロイヤークリニック」も、22年度前期から臨床科目「クリニック」の一内容として希望学生を募って実施する予定だ。
子どもの最善の利益を図るスクールロイヤーのあり方や体制はどうあるべきか、模索は続く。
(文:田中弘美、写真:琉球大学教育学部附属中学校)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら