スクールロイヤーの「半常駐」で学校に起きた変化 琉大附属中「チーム学校」で問題を未然に防ぐ
「スクールロイヤーの助言に基づき、解決に向けてしっかり手順を踏んだことで事態が収束に向かいました」と、比嘉校長は振り返る。
もう1つの成果事例が、校則改正プロジェクトだ。「生徒の要望だけでなく、教員としても指導しにくい校則があり、2021年度中に取り組みたい事案だった」と、生活指導主任の城間富秀教諭は話す。各学級の生活委員の生徒たちを集め、校則について話し合うプロジェクトチームを立ち上げ、西山准教授と横井氏も加わった。
「先生たちが変だと感じたり、指導しにくかったりする校則について生徒たちの意見を聞き、文言の書き換えを助言していただきました。例えば女子の制服、男子の制服と表記されていたものをスカートの制服、ズボンの制服に改め、男女問わずどちらでも選択できるようにしました。実際、早速ズボンの制服を購入して着用している女子生徒がいます」(城間教諭)

スクールロイヤーチームは、リーガルチェックをし、生徒も教員も解釈に困らないようあいまいな表現を避けるなどの配慮をしたという。
琉大附属中とスクールロイヤーを仲介した琉大教職大学院の吉田安規良教授は、「教員はもちろん、生徒たちのリーガルマインドの育成に大きく寄与したと思います」と、校則改正プロジェクトを評価する。
今後は携帯電話の使用方法などを見直していくとともに、「髪形や眉、シャツの着方、スカートの長さなど、できるだけ生徒たちが考えて、自律的に守れる校則を作れるよう改正作業を進めていく」(城間教諭)意向だ。
スクールロイヤーを広める仕組みづくりや人材育成が課題
琉大附属中の生徒支援委員会のように、養護教諭やスクールカウンセラーといった専門家だけでなく、「チーム学校」の一員にスクールロイヤーも含むメリットについて武田教授はこう語る。
「仮に暴行を受けた生徒がいたとしましょう。養護教諭はその傷痕をつぶさに観察します。一方、加害生徒は都合のいいうそをつくことがあります。スクールロイヤーは事実認定の訓練を受けた法律の専門家ですから、養護教諭から聞いた傷痕の状況と加害生徒の言い分をすり合わせて、うそを見抜くことができます。適切な対応方法も助言できるので、先生方は自信を持って今後の方針を立てられます。連携の中でいじめの兆候が見てとれる場合なども、被害生徒や学校に証拠保全の指示を明確に出せるので、学校は万が一の際に適切な対応ができるはずです」
実際、琉大附属中では今のところトラブルを未然に防ぐことができており、深刻な事案であっても大きなトラブルに発展したケースはないという。比嘉校長は、この2年余りのチーム対応の経験から、早めの相談が重要だと強調する。
「私も以前は公立校や行政側にいましたが、多くの場合、学校で何か問題がこじれてから教育委員会に相談し、初めて弁護士が関わる対応になっているかと思います。しかし、早い段階で教育委員会やスクールロイヤーに相談を持ちかけるほうが落ち着いて対応でき、未然にトラブルを防ぐことができます。本校のように常駐に近い形など、公立もスクールロイヤーに早期から相談できる仕組みが整うとよいと考えます」