22年度に廃止へ「教員免許更新制」の気になる行方 異論はないが、働き方改革とセットでの声多数
こんな研修を受けてはどうかという働きかけや、目標設定の手がかりになるほか、研修の受講履歴を基に求める人材を容易に探せるようにもなる。中教審の「『令和の日本型学校教育』を担う新たな教師の学びの姿の実現に向けて(審議まとめ)」には、「期待する水準の研修を受けているとは到底認められない場合は、職務命令に基づき研修を受講させることが必要となることもありえる」とある。どの程度の強制力があるものかわからないが、教員自身の主体性を重視しながらも、学ばない教員には何らかの対応があるということだろう。
「受講履歴を残すということが、管理でがんじがらめになると受け取られることもあるかもしれないが、履歴は自身のよさや可能性を認識できる学びの記録と前向きに捉えてほしい。研修を受けることは先生の義務ですが、研修を用意するのは自治体の責務です。もちろん、その学びの記録について管理職との対話が行われることもあり、管理職の働きが重要になってくると考えています」(荒瀬氏)
学びのプラットフォームには、どんな学習コンテンツが用意されるのか。大学や教育委員会、教職員支援機構のほか、民間企業のコンテンツなども検討されているという。
「教職員支援機構では、これまでの研修について見直し、どういう力をつけるための研修なのかを明確になる形で用意したいと思っています。現状の事例を基に学ぶ校内研修や課題別の研修、研修でファシリテートする力が身に付くような研修を推進していくのも重要になると考えています。また現在、さまざまな団体が研修を実施していますが、多様な研修を体系化してプラットフォームに載せていくのも私たちの仕事です。質の保証は難しい面もありますが、参加した人にレビューを残してもらい、それを参考にするという方法も考えています」
ただ、こうした新しい制度を進めていくには、「やはり働き方改革が欠かせない」と荒瀬氏は続ける。
「教員は忙しすぎる。いくらよい研修を用意したところで、受講する時間も気力もなければ意味がありません。やることは明確です。教員の仕事を減らして、教員の数を増やすことを真剣に考えるべきです。教員が疲弊していては、よい授業をできるはずがありません」
だが、学校の働き方改革は、残念ながら進んでいない。これをやれば解決するといった特効薬があるわけではないのが難しいところだ。
教員の仕事を減らす、教員をサポートできる人を増やす、教員そのものの数を増やす、そのためには教員の仕事に魅力を感じてもらえるよう働き方改革をしなければならないなど、一歩ずつ小さな取り組みを積み重ねることが求められる。それには予算もいるだろう。教員免許更新制に代わる新たな制度が、先生たちの負担とならないようしかるべき対策を併せて講じていくことが必要だ。
(文:柿崎明子、編集チーム 細川めぐみ、注記のない写真:EKAKI / PIXTA)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら