アフターGIGA、端末活用で「学び方」を学べの真意 紙と鉛筆で学んだ世代の再生産はできない

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デジタル教材・教科書は単に紙媒体を電子化したものではありません。大きな違いは、子どもたちの各自の学習履歴(ログ)が電子的に記録され残ることです。学習の進捗状況が可視化できるので、これまで先生が勘と経験で判断していたことが、科学的に学習分析(ラーニングアナリティクス)に基づく判断で指導できるようになります。例えば、ある単元でつまずいている子がいれば、いち早く先生がフォローできるし、理解が早い子は次のステップへ進めるといった具合に、個別最適な学びへどんどん近づけるのです。

また、ログが大量に蓄積されビッグデータとなり、それを解析することを通じてコンテンツの中身が見直され、より理解しやすいものに改善されるという利点もあります。将来的にはAIによって最適な教材が瞬時に提案・提供されることになるでしょう。そのとき、学校で使うデジタル教材は学習した量に応じて課金されるサブスクリプション制になるかもしれません。

「1人1台端末」整備後は、デジタル教材やデジタル教科書の活用、ラーニングアナリティクスの実用化へ

デジタル教科書については、21年度に国が予算をつけて希望する学校設置者に対して、小学5年生から中学3年生まで各学年1教科のみ配布しました。実際の導入は4割程度にとどまりましたが、22年度は教科数を増やし英語を最優先として全学校に配布する見通しとなっています。

ところが、ここにも問題があります。個別最適な学びを可能にするためには、大量に蓄積されたログをビッグデータとして活用することが不可欠です。しかし、その前提となる教育データを統一した規格にそろえる「標準化」や、個人情報に関わるログの管理をどうするかについては、まだ議論している最中です。ただ、私はデジタル庁が創設され、政府共通のクラウドサービス「ガバメントクラウド」の利用が前進したことで、22年度が初等中等教育におけるラーニングアナリティクスの実用化のターニングポイントになるとみています。

高校で「情報」が再編、25年共通テストで出題教科になった意味

――22年度は、高等学校でも新学習指導要領がスタートします。

高校には共通教科の「情報」があり、今は「社会と情報」と「情報の科学」のいずれかを学校が選ぶ選択必履修科目になっています。22年度からの高校の学習指導要領では、これが基礎的な内容を扱う全員に対して必履修となる「情報Ⅰ」と、さらに難しいことを学んでいく選択科目の「情報Ⅱ」に再編されます。「情報Ⅰ」ではプログラミングやデータサイエンスなど、いわゆる理系寄りの内容を文系の生徒も学ぶことになります。

しかも、この「情報」は25年1月に行われる大学入学共通テストの入試科目になりました。大学入学共通テストでは、音楽や美術などは入試科目ではありません。その道に進みたい人が頑張る教科という位置づけです。「情報」が大学入学共通テストの入試科目に加わったことは、「情報」が大学進学のために数学や国語、英語などと並んで一通り学ばなければならない教科になったことを意味します。

今、地域によっては、「情報」の授業を専門学校の先生などが非常勤講師として教えている例も多く見られます。この際、正式に採用しようという動きが全国的に起こったら、人材の争奪戦が始まります。人材不足解消のために、IT企業の社員に教えてもらってはどうかという話に発展しそうですが、皆さんお忙しいので授業はやはりオンラインでということになり、ここでまた免許法が立ちはだかるかもしれません。

――GIGAスクール構想が始まったことで、解決すべき教育制度の問題がいくつも同時に噴出しました。そのうえ大学入学共通テストに「情報」が入ることで、ICTの活用に対して懐疑的だった人も見方を変えざるをえなくなりそうですね。

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