「与えられることに慣れた」子どもの残念な行く末 工藤勇一校長、横浜創英でサイエンスコース新設
では、ここ横浜創英では、どんな改革が進んでいるのか。全員担任制の導入、実技教科のテスト廃止のほか、昨年の一斉休校後も緊急事態宣言中にオンラインと対面のハイブリッド授業に取り組むなどICTを活用した学びも進めている。「この1年で相当変わった」と工藤校長は話すが、決してトップダウンで進めているわけではないという。組織の人間一人ひとりを当事者に変えて、権限を委譲する。校長は方向性を決めるだけ。生徒だけでなく先生の主体性も取り戻し、学校全体を自律型に変えようというわけだ。
「今、横浜創英は、サービス提供型から自律型の学校に変わるために、教員が一丸となって取り組んでいます。対立の構造はいつも組織の中にあって、考え方の違いと感情の対立は切り分けるべきだと考えている。だから方向性が間違っていなければ、アイデアは基本的にGo、目指す方向性と逆戻りしたらStop、半歩でも一歩でも前に行くなら全部Goです。意思決定のスピードが上がり、教員も驚いています。私立は公立と違って、異動がないので、やってきたことを蓄積できる強みもあり改革のスピード感が違いますね」
今後は、海外大学への進学や帰国子女の受け皿となるインターナショナル系のコースの開設も考えているという。サイエンスコースと併せて、自分の興味を追究して、強みをつくる。そうして総合型選抜や海外大学に強い学校にしたいという狙いがあるようだ。変化の速い時代に対応するため、社会も多様な人材を求めている。学力や学歴重視ではなかなか育たない人材の育成へ、学校の姿にも変容が求められている。

横浜創英中学・高等学校 校長
1960年山形県生まれ。東京理科大学理学部応用数学科卒業。山形県で数学の中学教員を務めた後、89年から東京都の公立中学に赴任。東京都教育委員会、目黒区教育委員会、新宿区教育委員会指導課長を経て2014年千代田区立麹町中学校校長。宿題や定期テスト、学級担任制の廃止など、大胆な改革を行って話題となった。20年から現職
(文:柿崎明子、撮影:尾形文繁)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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