「与えられることに慣れた」子どもの残念な行く末 工藤勇一校長、横浜創英でサイエンスコース新設

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もう1つの狙いは、対話の訓練だ。グループで行うため意見の相違も予想されるが、対話を通して解決に至る過程を学んでほしいという。来年度は中1だけになるが、翌年からは学年を縦割りにしてチームをつくることも想定している。

「生徒に限らず、日本人は対話が下手ですよね。意見が異なると、そこに感情が加わって、対立が起きてしまう。大人の社会では感情の対立を避けるために、相手との対話を避けて管理職に根回しし、解決に時間がかかるというようなことも多々起きている。本来は意見の違いと感情は切り離さないといけないのに、対話の訓練をしていないのでそれができない。サイエンスコースでのグループ研究は、その練習にもなります」

ロケット開発の植松氏やデータサイエンティストの宮田氏などが協力

今、生きている社会に応用するために学びがある。それを体現した教育をやろうというのがサイエンスコースということだろう。

中でも社会とのつながりを象徴しているのが、探究活動に協力してくれる多彩な“応援団”だ。工藤校長の人脈で、「下町ロケット」のモデルになった、ロケット開発の植松努氏や、データサイエンスが専門でコロナ禍での活躍が著しい慶応大学医学部教授の宮田裕章氏、作家で演出家の鴻上尚史氏、障害がありながら小児科の医師として活躍する東京大学先端科学技術研究センターの熊谷晋一郎准教授など、多くの協力者が集まっている。

学びを実学に変えていきたいと本気で考えている人ばかりで、中には実際に授業をしてもいいという協力者もいるという。また植松氏は、企業がどのように教育に関われるのかを一緒に研究したいと話しており、今後は支援者とコラボしてどのようなことができるのか、いろいろな可能性を試していく。

探究活動の協力者として各界から著名な人物が多く名を連ねる
植松電機 代表取締役 植松努氏
日本環境設計 会長 岩元美智彦氏
東京大学先端科学技術研究センター 准教授 熊谷晋一郎氏
慶応大学 医学部教授 宮田裕章氏
デジタルハリウッド大学院 教授 佐藤昌宏氏
筑波大学 理事・副学長 医学医療系教授 加藤光保氏
スマートニュースメディア研究所・研究主幹 山脇岳志氏
時事通信社 代表取締役 境克彦氏
作家・演出家 鴻上尚史氏
コルク CEO 佐渡島庸平氏
SPACE CEO 福本理恵氏
Studio Gift Hands 代表取締役 三宅琢氏
東京女子医科大学 特任准教授 北原秀治氏
麻布大学 生命・環境科学部准教授 澤野祥子氏
COMPASS ファウンダー 神野元基氏
voice and peace 代表取締役 赤平大氏
アドウェイズ 取締役会長 岡村陽久氏
経済産業省サービス政策課長・教育産業室長 浅野大介氏
内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局審議官 合田哲雄氏

 

工藤校長は前任の麹町中学校で、宿題と定期テストを廃止、全員担任制を導入するなど、前例のない改革を行って注目された。

「全員担任制は、当時直面していた学級崩壊を食い止めるための方策でもありました。崩壊したクラスでは、担任対生徒という対立構造が例外なく生まれますが、従来の固定担任制ではほかのクラスの教員は手助けをしたくても、遠慮して手を出せないでいました。生徒への最善の支援を行うことよりも担任制システムが優先され、結果として教員も生徒も苦しんでいたのです。全員担任制に変えることにより、そうした問題が大きく改善されます。また、逆に生徒の視点から見れば、相談したい先生を自ら選ぶことは、生徒自身の自律への第一歩となります。宿題の廃止も同様です。受け身の勉強、与えられ続ける勉強は生徒の自律性を失わせていきます。自らの意思で自分の弱点を見つけて克服する学習に転換していかなければなりません」

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