「令和の日本型学校教育」何が昭和と違うのか 新しい時代を生きる子どもに必要な資質と能力

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何でも自分たちでやろうとする教育村の自前主義

こうして議論が進む中で、学校現場では教職員が疑問に思ったことや自分の考えを言い出しにくい雰囲気があるという話題に。

今村氏は、自らの体験を基に「先生一人ひとりが、自分の思っていることを言っていいんだと思える環境をつくるにはどうしたらいいのか、改めて考えさせられている」と言うと、岩本氏は「学校には、何でも自分たちだけでやろうとする自前主義がある。弱みを出せない、うまくいっていないと言いにくい。学校や先生が何に困っているのかわかれば、先生たちや子どもたちのために手助けしたいと思っている人は地域にもたくさんいるはず」と話した。

戸ヶ﨑氏は「教育村には自前主義が当たり前のようにずっとあった。しかし社会のほうには、学校が外部に協力を求めると、もっと内部で努力しろ、外に頼るなという論説が多くなる」とも指摘。神野氏は「先生は何かやりたいことがあると、まず学年主任に上げる。それが校長に上がり、そこから教育委員会に上げられて結論が出るまで時間がかかる。そうしたプロセス自体を変える議論もしたほうがいい」と語った。

荒瀬氏も「外の風を入れるのは大切だが、実際入ってくると面倒くさい、違う価値観はダメだという防御が働く。前例にないからやらないではなく、いろんな角度から見てみる。すぐに結論を出さずに考えることが大事」だと話した。

「学校には、失敗が許されない環境がある。成功しなければならないとなると、探究や試行錯誤ができず挑戦もできなくなる」。そう話した岩本氏は、ICTの活用においてもうまくいかないことや小さな失敗はあるとし、戸ヶ﨑氏は「やって批判されるより、やらないで批判するほうが楽。これまでは守りに入るのが当たり前の文化だったが、一歩踏み出す勇気が必要」と続いた。

一方、堀田氏は「コロナ禍でオンライン授業ができたところとできなかったところの違いは何かを調べたデータを見ると、校長の決断力と教育長が勉強しているかどうかの差だということがはっきり出ていた。先生たちがオンライン授業をしようとしたとき、教育委員会がストップをかける事例を見ていたら悲しくなった。挑戦できる環境が大事」と話した。

コロナ禍では、中教審の運営にも大きな影響があった。審議会をオンラインで開催することになったが、文部科学省に十分なネット環境が整っておらず当初は大変な苦労があったという。その後、審議会の様子はネットで公開されるようにもなり、こうして中教審メンバーの率直な意見を聞くことのできるシンポジウム開催にも至っている。まさに文部科学省も変化の最中にあるのだ。

最後に荒瀬氏は「このシンポジウムも、私たち以外に大勢の人たちが動き、支えてくれたから実現できた。自分からは見えない、聞こえないところにあるものを見よう、聞こうとする、相手の立場になって考えるということが必要。そうすれば日本の教育でも、子どもたちが主語になっていくだろうし、さらには先生方や教育委員会も主語になっていくようにしなければいけない」と結んだ。

今、日本の教育は、これまでになかった大きな変化に直面している。新学習指導要領の実施をはじめ、GIGAスクール構想によるICT活用の本格化など、昭和から続く学びの風景が一変しようとしている。どんな組織においても変化に対する抵抗は必ずあるが、今の子どもたちが生きる未来はまったく違った世界になっている可能性が高い。その現実と向き合い、まずは教育に関わる一人ひとりの意識の変革が必要だろう。

オンラインシンポジウム「「令和の日本型学校教育」を語る!~一人一人の子供を主語にする学校教育とは~」の動画はこちら

(写真:iStock)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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