石角友愛「16歳だった私が、米国で学んだこと」 AIビジネスデザイナー語る「未来の仕事」とは?
それでも先生のアメリカ史は面白かったですね。アメリカの歴史は結局、憲法の歴史なので、合衆国憲法の成り立ちを軸に、授業では独立宣言などさまざまなオリジナルソースを読みながら、議論していくのです。まるで法律学のような授業で、例えば、宗教上の自由の観点から、街にはクリスチャン以外の人もいるのに「クリスマス時の街頭にサンタクロースの人形を置いているのは是か非か」といったさまざまなケーススタディーをしながら議論するのです。こうした勉強は後にアメリカで生活していくうえで、とても役立ちました。
Failure(過ち)ではなく、Learning Step(次へのステップ)
――日米両方の教育を受けてこられて、今の日本の教育に変えるべき点があるとすれば、それは何でしょうか。
これから、正解が1つではない世界を生きていくには、子どもたちは人間性や洞察力を磨いていく必要があると思います。それには、プロジェクトベースの授業をもっと増やしていくのがいいでしょう。とくに、理数とリベラルアーツの学問を統合的に学べるSTEAM教育はプロジェクトベースで教えるのがよいと思います。単なる座学ではなく、実践して学ぶことによって身に付けることができる。合衆国建国の父であるベンジャミン・フランクリンの言葉に「言われたことは忘れる。教わったことは覚える。やったことは学ぶ」というものがあります。私の好きな言葉の1つですが、やはり人間は実際にやってみないと本当の意味では学べないのかもしれません。
――今、日本でも重視されるSTEAM教育でも学び方が大事だということですね。
STEAM教育とは、学問の垣根を超えて、数学の要素に基づいてサイエンスとテクノロジー、それにエンジニアリングとリベラルアーツを使って理解する体系的な学びです。ただ単にサイロ的に(それぞれ独立した形で)学ぶだけでは効果は出ないのです。
私はよくΠ(パイ)型の人間と言いますが、自分の強みが2つあるとしても、その2つをつなげる何かがないと大きなシナジー効果を生むような考え方はできません。やはり点と点を線にするような力が必要なのです。その意味でも、これからはΠ型の人間を育成していくべきだと考えています。
――親が子どもに与えることができる力とは何でしょうか。
私が今、子育てをしていて意識しているのは「R&R」を使えということです。これは、Reasoning(リーズニング/論理的思考能力)とResourcefulness(リソースフルネス/問題解決能力)を意味します。リーズニングは論理的思考能力ですが、もう1つのリソースフルネスは人生を豊かに生きていくうえで、極めて大事なスキルだと考えています。リソースフルネスとは、目的の実現や、問題が起きたときに、自分の持っている能力を、どう最大限に生かして解決するかという能力です。これにはクリエーティビティーも関わってきます。
こうした能力を養うために、どうすればいいのか。それは、とにかく子どもに何でも経験させることでしょう。経験から論理的思考能力や問題解決能力、コミュニケーション能力を身に付けさせることが大事なのです。
また、それと同時に子どもに自己肯定感を与えることも重要です。私が幼い頃、他の子どもとまったく視点の違った絵を描いたとき、両親は「周りの子どもと違うのはよいことだ」と肯定してくれました。違っていて、いい。そんな親や、周りの大人の何げないポジティブな言葉は、子どもを前向きな人間にするのです。