――保護者会などで意識していることは?
忙しい中で参加していただいていることを前提に、要点を押さえて短時間で終えるようにしています。配付資料を読み上げる先生も多いですが、保護者にとっては時間の無駄。「教育現場は社会常識がない」と言われてしまうのはそういうところなので、僕は資料も事前に配って読んでおいてもらいます。
当日は視覚情報に重きを置き、僕はKeynoteで写真を多用して作ったプレゼンテーション資料をプロジェクターに映しながら話をします。授業の一部を抜粋した動画を流すことも。今勤めている学校は、コロナ禍で保護者会はZoomになりましたが、基本的には同じスタンスですね。
しんどいときこそ「報連相」
――保護者とのやり取りに慣れていない初任者や若手にアドバイスはありますか。
しんどいときこそ早めの「報連相(ほうれんそう)」(報告・連絡・相談)を心がけたいものです。実は僕、新人の頃は1人で抱え込んで大きなトラブルに発展させてしまうタイプでした。先輩たちが忙しそうなので声をかけづらく、勇気を出して相談しても「うちも大変なんだよね」と言われてしまって。

保護者との関係性に悩んでいてもなかなか先輩に相談できず、ついには「ネトゲ廃人」に。そんな中、親身な副校長と出会ってようやく話せるようになりました。しかもその方は「よく話してくれたね」と解決を助けてくれた。それが教員生活10年目の時のこと。変わるまでに時間がかかりましたね。
気軽に話せる仲間が1人か2人でもいれば助かることは多いです。とくに管理職は「責任職」なので、相談するほど喜んでくれるでしょう。僕はTwitterで面識のない先生から相談を受けることがよくありますが、学校外で相談できる人をつくるのも1つの方法です。
一方、もう少し相談しやすい雰囲気があったらよかったのにとも思っていて。だから僕は、忙しそうに見えないよう気をつけているし、「最近どう?」「ここの指導、いいアイデアありますか」と声をかけ、同僚と日常的に雑談ができる関係づくりを心がけています。
――教員の対応でクレーム化しやすいパターンはありますか。
今はスピード感が求められる時代。打てば響くような「即時対応」をすると保護者から感謝されるし、問題解決も早いです。ただ、教員は本当に忙しい。緊急案件が重なって迅速に対応できないこともあり、不信感を持たれてしまうケースがあります。僕も昔、学校側の事情を説明しても言い訳にしか受け取っていただけないことがありました。
だから、保護者に不安を与えないよう、安易な約束やあいまいな返答はしません。「いつまでに」「どのように」が明言できないときは連絡帳に「本日、お電話させていただきます」とだけ書き、直接お話をするようにしています。
保護者は大切な子どもの様子やトラブルの事情を聞きたいだけで、それを学校が「モンスターペアレント」とレッテルを貼ってしまうことも多々あるのではないでしょうか。保護者に教員の忙しさをご理解いただく必要はありますが、学校でのトラブルは監督者である僕たちの責任と捉え、日頃から地道に説明責任を果たすことが大切だと感じています。
(文:編集チーム 佐藤ちひろ、イラスト・写真提供:田中光夫氏)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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