留学経験ゼロで「ハーバード首席卒業」の日本人 バイオリニスト廣津留すみれさん語る、自学力

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論理的思考を育む教育の重要性を伝えたい

廣津留さんは、そんな自身の経験を生かし、7歳から18歳までを対象にした英語のサマースクール「Summer in JAPAN」を実施している。ハーバード大学在学中に持っていたリソースと、英語教師であったお母さんの廣津留真理さんの知見を組み合わせて、母娘共同で開発、プログラム化したもので、今年で9年目を迎える。講師となるのは選び抜かれた現役ハーバード大学生。午前中はライティング、午後はプログラミングやプレゼンテーションといった4つのワークショップの中から、生徒が自ら好きなものを選んで参加する。ユニークな点は、どのクラスも無学年制であるというところだ。

Summer in JAPANでの様子。ハーバード生と直に接し、学び合う体験は子どもたちにとって大きな刺激だ。SIJクラシックコンサート「廣津留すみれとハーバードの仲間たち」では廣津留さんと米国トップ大学の学生たちがステージに立ち、さまざまな演目を見せてくれる
(写真:廣津留氏提供)

「子どもは無限大のチャンスや可能性を秘めています。ですので、年齢でクラスを分けるということはしません。高校生は、小学生のユニークな発想に刺激を受けるし、小学生は高校生に接することで、このようになりたいというロールモデルができたりするからです。サマーキャンプを通じて、子どもたちがマインドセットする瞬間がいくつもあります。私自身、ハーバード大学のキャンパスツアーに参加した時に、それまで想像のものでしかなかったハーバード大学が身近に感じられ、価値観がひっくり返りました。

そのような感動やインパクトを、子どもたちにたくさん与えてあげたい。子どもたちは、自分の生活圏内にある小さなコミュニティーでしか、なかなか人に出会うことができません。私自身もそうだったのですが、ロールモデルがいなかったため、海外という選択肢があることすら思いつかなかった。そんな環境にいたので、大人がそのような機会をできるだけ多く提供してあげることも大事なことだと考えています。

あとは、ディスカッションなどインタラクションの学びを大切にしています。先生に何かを聞くときも、生徒側が発言するのは自由なんだと、子どもが信じられる環境じゃないと質問もしづらい。プログラムの間、どのタイミングで質問を投げかけても大丈夫ということを示して、子どもたちが発言しやすい環境を整えることを意識しています」

柔らかい雰囲気ながら、てきぱきと質問に答えていく廣津留さん。その答えは、論理的でわかりやすい

では、廣津留さんが日本の教育で必要だと思うものは、何だろうか。

「日本では、作文の授業があまりないと感じるのですが、作文は論理的思考の基になるものなので、ロジカルな文章の組み立て方や、体系立てて文章の書き方を教える授業が、もっとあるといいのかなと思います」

また、コメンテーターの仕事をする中で、日本では論理的思考よりも情緒的に物事を判断する場面が多いと感じることもあるそうだ。つい、エビデンスやファクトよりも、噂や大多数の意見を信じてしまうことにも、論理的思考と科学的思考は役立つ、と廣津留さんは語る。

「ロジカルシンキングはどんな科目にも通じています。国語もそうですし、数学もプロセスが大事。すべてが論理です。なので、論理的思考は学生のうちにしっかりと学ぶべきだと感じました。プログラミングも、まずはロジックをどうやって組み立てるかが重要になる。プログラミングでアプリが作れるというのは、しょせん後からやってくる結果にすぎません。

私が論理的思考を身に付けられたのは、ハーバード大学での日々でした。米国人があまりにもロジカルなので、どんな議題でも、ロジックで返す必要があったためです。日本では、『私はこう思います』と言いますが、アメリカではそれは認められません。著者がこう書いているからこうです、と引用の出典まで言わなくてはいけない。ファクトをベースに何かを判断するという思考法は、これからますます重要になってくるでしょう」

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