ハーバード大学では、よく「社交」と「睡眠」と「成績」のうち2つしか手に入れることができないといわれるという。
「そうなると、まず睡眠時間を削りますね(笑)。さらにハーバード大学の学生は学業と何かを両立している人が多く、時間が足りないので、優先順位のつけ方が上手な人たちが多かった印象です。優先順位のつけ方は人それぞれ。例えば、首席で卒業することにはこだわらないけれど演劇を頑張りたい、スポーツに打ち込みたいとか。逆に、大学院で医学部に入りたいからどうしても首席で卒業したいなど。自分に必要なものを決めたら、必要ないものは潔く捨てる。私は、一度目標を立てたら、貫きたいタイプ。与えられた課題を一つひとつ丁寧にこなしていたら、いつの間にかハーバード大学を首席で卒業していました」

(写真:廣津留氏提供)
バイオリンと勉強、どちらも諦めないという選択
そんな廣津留さんがバイオリンを始めたのは、3歳の頃。音楽好きな両親にバイオリンを与えられたのがきっかけで、気がついた時には日々の練習は生活の一部だった。転機は、小学校3年生の時。初めて出場したコンクールで、ライバルの存在を知り、この中で誰よりもうまく弾きトップになりたいと強く意識し始めたという。
「もともと負けず嫌いな性格ということもあって、バイオリンと勉強のどちらかを諦めるという選択肢はなかったですね。100ある時間を、バイオリンと勉強で50ずつに分けるのではなく、両方100と100で詰め込んで、200にしちゃえばいい、そう考えていました。どちらかを諦めるのではなく、どちらも全力で取り組むために、時間をどう有効に使うか、つねに工夫していました」
小学生の頃は、勉強は、学校の授業で集中して内容を吸収、家に帰ってからは一切しないでバイオリンの練習時間を確保するという日々が当たり前だった。
「家で勉強する時間が取れないからこそ、逆に授業に集中し、勉強を頑張れたのかもしれません。時間は使い方次第で、どうにでもなる。むしろ、音楽と勉強、両立すべきことがあったからこそ、効率的になれた。やることが多いほうが、人は効率的に動けるのかもしれません」

(写真:廣津留氏提供)
2009年にイタリアで行われたIBLA国際コンクールでグランプリ優勝を果たし、翌年、受賞者とのカーネギーホールで行われたリサイタルを含め、全米4州でのアメリカ演奏ツアーを行った廣津留さん。そのツアーの帰りに参加したハーバード大学のキャンパスツアーが、ハーバード大学受験へとつながった。
「ハーバード大学の受験でも、バイオリンと勉強を両立してきた経験が役立ちました。それは目標を細分化して、ToDoリストを作ることです。確かにハーバード大学を受験する、とぼんやり捉えれば、ものすごく大変なことをしているようで気が遠くなります。ですが、細かく砕いていけば、今やるべきことが見えて、目標が近づいてくる。日本の大学を受験するときのように、自分で願書を書く。それを英語かつオンラインで淡々とやるだけ。パソコンが使えれば、きっと誰でも挑戦できると思います。
目標を細分化して、ToDoリストを作ることはとても有効です。
バイオリンの練習も同じです。漠然とした目標ではやる気が出ない。例えば仕上げなくてはいけない曲があったら、今日の練習ではここにフォーカスして練習するというToDoリストを作る。筋トレにしても同じでしょう。漠然と何かをやるのではなくて、大きな目標を細分化し、ToDoリストを作成して、今日は何をすべきかを考える。後はこつこつと今日やるべきことを積み上げていくだけです」