秋田新幹線、初代「こまち」E3系が遺したもの 定期列車運行は終わったが臨時列車の可能性も

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さて、職を失った初代こまちの車両はR21編成とR22編成の2本で、いずれもこまちの車体色のままで使用された。「こまち」から退いた後、車体側面にあった「こまち」のロゴマークを消したくらいが大きな変化で、あとはそのままで使用されたといってよいだろう。

ところで、秋田新幹線向けの車両を東北新幹線内だけで使用するのも不思議かもしれない。東北新幹線では、盛岡まで17両編成の長い編成を走らせることができるが、盛岡から先は八戸までが12両編成、新青森・新函館北斗には10両編成を超える列車はホームに入らない。

ホームの長さを短くした理由は、八戸・青森方は輸送量が少ないことと、建設費を抑えたためだが、東京方では東海道新幹線並の列車本数が設定されている都合で、編成の短い列車を多数設定するわけにも行かない。そのため、新在直通用の車両を活用することで、列車の長さを調整、輸送量の増減に対処している。

初代こまちのR編成はこまちの増発で追加増備されたほか、東北・上越新幹線の開業時に登場した200系がちょうど置き換えの時期にあったため、200系で2階建ての車両を組み込んだ16両編成のグループ(H編成)の後継車両として作られた編成もある。秋田新幹線用のR編成が2005年まで増備され続けたのは、こうした事情がある。

こまちから退いた後、R21編成とR22編成は2本ともフルに使用され、検査のときはE6系が代わりに使用された。検査の際は古巣に戻るというべきか、秋田新幹線の線路を走行し、秋田車両センターで検査を受けていたのだが、2019年3月に新幹線総合車両センターに転属、こちらで検査を受けることになったため、秋田新幹線の線路は走らなくなっている。

現美新幹線も引退

E3系R編成が臨時列車などで復活の可能性があるのに対し、運行終了とアナウンスされているのが現美新幹線だ。この車両は「走る美術館」として外観のデザインをはじめ、車両ごとに個性ある現代アートを展示、13号車にはカフェも設けられている。この列車は上越新幹線越後湯沢―新潟間で週末を中心に運転され、団体臨時列車で上野や仙台に現れたこともあったが、2020年12月19日の運転で終了となった。

現美新幹線を含め、JR東日本の新幹線は新幹線総合車両センターで大規模な検査を受けているが、現美新幹線は間もなく大規模な検査の期限に到達するようだ。検査を行わず、そのまま引退・廃車と予想されるが、伊豆方面の観光列車「IZU CRAILE(伊豆クレイル)」も同じ理由で引退している。

R編成の定期運用最終日となった2020年10月31日にはR21編成とR22編成が2本とも使用され、初代こまちカラーの姿を見るべく、沿線や駅に人が集まっていた。筆者も大宮→東京間で久々にE3系R編成を堪能、東京駅では20~30人の群衆とともにR21編成とR22編成の2本とも出発を見送ってきた。

2024年春営業開始予定のE8系(画像:JR東日本)

山形新幹線では新型車両のE8系が2022年9月以降に登場し、2024年春からの営業運転開始を目指している。E8系は17本が投入される計画で、現存の山形新幹線用E3系L編成よりも2本多いが、この2本がR編成の置き換え用と見るべきだろう。

E3系R編成の定期運用はなくなったが、臨時列車でR編成が戻ってくる日を楽しみに待ちたい。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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