秋田県「全国学力テスト」成績上位常連のなぜ 多くの教育関係者が視察する、気になる内実
その強みは「秋田わか杉 七つの『はぐくみ』」としてまとめられ県下にも発信されているが、「基本的な生活習慣がしっかりできており、学校でも家庭でもよく勉強している子どもが多い印象」と安田氏が話すとおり、こうした教育環境が「全体の学力を底上げしている」(安田氏)という分析だ。
とはいえ気になるのは、やはり授業の中身である。秋田県は、早くから少人数学級を取り入れていることでも知られる。学級編制については01年以降、都道府県教育委員会が児童生徒の実態を考慮して、国の標準を下回る学級編制基準の設定が可能になるなど制度の弾力化が図られた。そこで秋田県では、子ども一人ひとりをより丁寧に見られるようにと、01年 に県の単独事業として少人数学級を導入している。
「当時、県内では少子化で1学級が40人に満たないクラスも多かった。そのため、1クラスの人数が多い学校に先生を手当てすることで、少人数学級を実現しました。現在は、小・中学校の全学年と高校1年生を少人数学級としているのに加え、小学校で国語、算数、理科、中学校で数学、理科、英語に講師を加配して指導を行っています」(安田氏)

秋田県では、かねて探究型の授業にも力を入れてきた。県の最重点課題として「“『問い』を発する子ども”の育成」を掲げ、「児童生徒主体で、子ども同士で探究させたり、投げかけ合ったり、いろいろな協力をさせている」(安田氏)という。今年4月、小学校を皮切りに適用となった新学習指導要領で掲げる「主体的・対話的で深い学び」を約20年前から実践しているのだ。また秋田県の教員は、「指導力のあるベテランの先生が多く、特別な研修を行ってきたわけではないが、各学校が実施する授業研究会が充実しており、探究型授業が日常の授業に根付いて日々実践されている」(安田氏)。この授業を見ようと、全国から秋田県に多くの教育関係者が視察に訪れるというわけだ。
一方で、課題もある。全国一の人口減少率だ。地方の多くが同じ課題に直面しているが、秋田県はその先頭をいく。だが、「統合などの再編を進めながら、少子化だからこそできる手厚い教育を進める」と安田氏は前向きだ。また、小・中学校の学力は高いのに高校は……というのもよく言われることで、難関大学への進学率が低いという指摘もある。