ドルトン東京学園校長の荒木貴之氏が重視する「学習者中心主義」にICTが欠かせない理由 ドルトン東京学園の挑戦から見えてくるもの

一斉休校で得たフルオンライン授業の経験値
――開校2年目にして迎えたコロナ禍で、新しく得た気づきについて教えてください。
わが校では、2019年の開校当初からクラウドやICTツールの教育活用を行ってきましたが、この春の新型コロナウィルス感染症による一斉休校で初めてフルオンライン授業に踏み切りました。オンライン授業に対する生徒や保護者の満足度はおおむね高く、教員たちの多くがオンライン授業からたくさんの気づきを得たと振り返ります。
例えば、英語の発音は、リアルに対面する教室で聞くよりも、画面を通して個々の生徒の顔がアップで大きく見られる環境のほうが、より正確にその技量を把握することができるとわかりました。

また、子どもの個性や志向によっては、教室で発言するよりもチャットにテキストで書き込むほうがやりやすいというケースもあり、オンライン授業の中では「生徒全員が教室の最前列に座っているようなフラットな関係性」を体験したと聞きます。これは教職員にも同じことが言えるのですが、全員がリモートから参加したオンラインの職員会議では、若手の先生も意見が出しやすいという感覚があったようです。
9月以降は、安全性に万全の配慮をしながら登校を再開し、リアル対面の授業に戻していますが、例えば台風上陸等の災害時には時間や日付限定でオンライン授業に切り替えるという意思決定がこれまで以上にスムーズに行えるようになりました。フルオンライン授業の経験値は、これからもさまざまなシーンで生かされていくと感じます。
ICTを活用すると、子どもの生活の中で学びにおける物理的・時間的な分断をなくすことができます。災害時にかかわらず、生徒みんなが学校に集まる「同期」の学びと、学校外での「非同期」の学びを組み合わせながら、学びの連続性を担保していくことができるようになってきています。
「学習者中心主義」のためのICT活用
――登校が可能になった現在は、ICTをどのように活用されていますか。
ドルトンプランは、自由と協働の2つの原理をベースとしながら、子ども1人ひとりの知的好奇心や探究心を育てるために、子どもが主体的に学ぶ「学習者中心主義」という軸を大切にしています。