ICTで「子どもの個性が浮き彫りになる」理由 福島県の小学校に見る「ICT教育のリアル」

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同校では、タブレットを持ち帰っての家庭学習にも力を入れている。「児童が学習記録を基に自分に合った自主学習を進められるドリルコンテンツや、授業の内容を復習できるソフトも入っています。さらに予習もしやすくなりますから、反転学習(※1)にも活用しています」
※1 児童が事前に家庭で学習し、授業ではより詳しく学んだり、議論をして学びを深める学習方法。従来とは学びの順番が反転していることからこう呼ばれる

埋もれがちな個性や声も、デジタルが浮き上がらせる

(提供:駒ケ嶺小学校)

2010年から始まった、同校のICT教育。その成果が垣間見えるエピソードがある。

「6年生ともなると、教師の想定を超えた使い方を提案してくれます。先日、『画面にワークシートを貼り付けて歴史新聞を作ってみよう』という課題を出したところ、ある児童から『別のソフトを使って、プレゼン風にまとめたい』という声が上がりました。希望どおりにやらせてみたところ、源平合戦をコント仕立ての物語にまとめ上げ、見事にプレゼンしてみせました。6年間継続してICT教育を受けてきた、新地町の児童ならではの成果だったと思います」と、橘先生は胸を張る。

また、ICT活用は意外な側面から児童のポテンシャルを引き出してくれるという。

「クラスルームではどうしても、積極的に発言する子と黙って聞く子という“役割分担”が固定化しがち。しかしデジタルの世界では、普段おとなしい児童が目覚ましい活躍を見せることがあります。ICT授業では、『(タブレットに書き込んだ意見を)読んでみて』と促すことで、そういった児童が発言するきっかけをつくれるようになりました。児童の学習意欲はもちろん、自己肯定感の向上にもつながっていると感じます」

(提供:駒ケ嶺小学校)

一方、保護者と教員のコミュニケーションにも、ICTが役立っているという。

「本校では保護者にもIDとパスワードが配布され、学習プラットフォームにアクセスできます。ここにはタイムラインのメッセージ機能があるため、クラスのちょっとした情報や明るい話題などを、保護者にすぐ伝えることができます。以前は、保護者と教員のコミュニケーションといえば電話や連絡帳を使っていました。しかしこれではセキュリティーが担保されませんし、児童本人が目にしてしまうおそれもありました。メッセージ機能によってセンシティブな相談がしやすく、スピーディーな情報共有も可能になりました。以前本校が行ったアンケートでは、保護者の91.8%が『ICT活用によって子どもが理解しやすくなった(学習意欲が向上した)』と回答しています」

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