プログラミングで日本が挽回するカギは「教員」 STEAM教育が目指すのは「主体性」の獲得

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※1 Society 5.0:内閣府が提唱する人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続くもので、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立するとされる

日本の教育レベルが高いのは教員のおかげ

プログラミングに対する熱は教員によって大きく異なり、やる気のない教員も一定数いる。そんなとき、最も効果的なのは子どもの反応を伝えることだと利根川氏は明かす。

「校長がいくら言っても自分ごと化できない教員でも、『じっと座っていられないあの〇〇君が45分間集中できた』といった児童の反応を聞くと、一気にモチベーションが上がります。GIGAスクール構想※2で『1人1台PC』が実現すれば、これまで及び腰だった教員も動き出すでしょうから、一気にプログラミング教育が深まる可能性もあるのではないでしょうか」

教員自らプログラミングを学び、部首の仕組みが理解できる漢字シューティングゲームをつくって成果をあげている教員もいる。各地で成功事例も出てきているが、これはプログラミングという分野に精通しているから成し遂げられたのではなく、もともとの授業開発力が高いからだと前出の石戸氏は指摘する。

「プログラミング教育やSTEAM教育の推進という点で、日本が世界から遅れているのは事実です。では教育そのもののレベルはどうかといえば、少なくとも初等・中等教育における理数教育は、PISA※3でも相当高い水準に到達していることが証明されています。さらに、図工や音楽といったSTEAMのA(Art)の部分をこれだけしっかり教育している国はそれほど多くありません。だからこそ高度成長を成し遂げ、経済大国にもなったわけです。その要因は、日本の教員のレベルが極めて高く、情熱的に子どもたちへ学びを提供してきたことにあります。その優秀さを生かせば、Society5.0時代でも、世界に誇れる教育へとシフトできることは間違いありません」

では、具体的にどうやってシフトチェンジを成功させるのか。後編では、日本人女性初の数学オリンピック金メダリストでジャズピアニストの中島さち子氏に、海外でのSTEAM教育の現状を紹介してもらいながら、今後の教育のあるべき姿をさらに探っていきたい。

後編はこちら

(注記のない写真はiStock)

※2 GIGAスクール構想:Global and Innovation Gateway for Allの略。児童生徒のために、1人1台の学習者用PCと高速ネットワーク環境などを整備し、個別最適化された創造性を育む教育を実現させる構想
※3 PISA:Programme for International Student Assessmentの略。OECD加盟国で実施される15歳を対象とした国際的な学習到達度テストで、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野の習熟度を調査する。最新の2018年度調査で日本は読解力が8位、数学的リテラシーが5位、科学的リテラシーは2位だった

制作:東洋経済education × ICTコンテンツチーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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