プログラミングで日本が挽回するカギは「教員」 STEAM教育が目指すのは「主体性」の獲得
「それだけでなく、課題解決という目的のためにプログラミングをすることは、Society5.0※1時代の思考基盤と位置づけられているSTEAM教育の展開につながります」(石戸氏)
STEAM教育とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)を統合的に学習する「STEM」教育に、Art(芸術)を加えて提唱された国際的に用いられる教育分野のことだ。これまでバラバラの単元で、一方的に教員が与えていたこれらの知識を統合・活用し、社会で応用できるようにしていくことを目的としている。
「技術が進化したことで、社会は大きく変化しています。必然的に、そこで生きる人に求められる力も変わりますから、教育もそれに合わせて変わらないといけません。とりわけ、現在は生活の隅々までコンピューターが入り込んでいるわけですから、『読み書きそろばん』ではなく、『読み書きプログラミング』が基礎教養となっていきます」(石戸氏)
つまりプログラミングは、STEAM教育の要となる「統合・活用」の具体的な手段になるのだ。しかし、これまでICT化が進んでいなかった日本の教育現場では戸惑いもある。全国の教員および教育機関に対し、プログラミング教育の研修や教材を提供しているNPO法人みんなのコードの代表理事、利根川裕太氏は次のように話す。
「教員はエンジニアではありませんから、どのように教えたらいいのか見当もつかないという感覚があるようです。教育委員会からも、『どういう教員研修をすればいいのか』といったご相談は多く寄せられています」

プログラミングの経験がない教員に、それを教えろというのも無理な話だ。しかも、体験・実践すればいいというものでもないという。
「実践だけだと、教え方のポイントがつかめなかったり、遊びとの違いがわかりにくくなったりしてしまうんです。そのため、われわれの研修は座学と実践の組み合わせで構成しています。2015年から延べ1万人の教員にシンポジウムや研修を提供してきましたが、地域や学校でプログラミング教育が成功しやすいのは、先進的な意識を持つ教員が、他の教員に教え方を伝えるという循環ができたときです。私たちもノウハウを伝えながら一緒にその学校に合った広め方を考えたり、地域での勉強会などのコミュニティー形成をサポートしたりもしています」(利根川氏)