ケニア銃殺事件、建設業の海外展開に警鐘 日本人社員が強盗団に襲われ死亡

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とはいえ、これまでに起きた大きなトラブルと言えば契約にまつわるものが中心。建設業の海外展開を推進する国土交通省のリスク管理の視点も、契約上のトラブルを避け、資金回収をいかに円滑に進めるかが主眼となっている。今年初めに起きた日揮への大規模なゲリラ事件のような人命に関わる大きな問題は起きていない。とくに今回の案件のようなODAは、相手国にとっても国家プロジェクトであり、警備なども相手国側が万全を期しているから大丈夫、との見方が業界の中でも強かった。

人命に対するリスク意識は低い

だが、物取り目的とはいえ、いきなり銃を使って命を奪うような地域で、どのように安全に円滑に工事を進めていくのか。人命に対するリスクは無視できない。安全コストを含め、これから大きな問題として進出企業にのしかかってくることになる。現時点では大手といえども、リスクコンサルタントとの契約、警備体制の基準づくりなども現地任せとなっているケースが多い。まだまだ日本側のリスク意識が低いといわざるを得ない。

個々の企業自身の問題でもあるが、業界団体や、海外進出の旗振り役である国土交通省がどのように指導していくかも重要だ。「どのような対策をとっていくかは今後の検討課題」(国土交通省建設産業局国際課)というが、早急な対策づくりが求められる。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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