東京海上が地方鉄道に社長を派遣したワケ 「真田丸」ブーム後見据え、軽井沢客取り込み

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しなの鉄道の2016年3月期決算は売上高44億円、営業利益は3億円の黒字。赤字に苦しんでいる地方の第三セクター鉄道にあって、しなの鉄道は優等生の部類に入る。

しかし、しなの鉄道に対する玉木さんの見立ては違う。「黒字はいろいろな経営課題を先送りしてきた結果だ」。たとえば車両の更新。しなの鉄道の保有する車両59両はすべてJR東日本から譲渡されたもので、どの車両も製造されてから40年近く経っている。しかも「40年を過ぎた車両を大切に使っている三セク鉄道会社はたくさんあるが、時速100kmの速度で長距離を走っているのは当社くらい」だという。

他社よりも車両を酷使しており、近い将来の車両更新は避けられない状態だ。車両以外にも橋梁や電気設備など、老朽化した設備は少なくない。これまでも設備更新の必要性は認識されていたものの、更新計画は作られていなかった。設備を更新して減価償却をすれば、現在の営業利益はあっという間に吹っ飛ぶ。

人件費の上昇も問題に

しなの鉄道の玉木淳社長

もう一つの課題は従業員の年齢構成だ。しなの鉄道の従業員数は267人(2016年4月1日時点)。社員の平均年齢は34~35歳と若く、50代の社員は少ない。理想的な社員構成だが、これが将来のリスク要因となる。今後15年はあまり退職者が出ず、平均年齢だけが上がっていくのだ。その一方で、少子高齢化により沿線人口は年々減少していく。玉木さんの見立てでは15年後には運賃収入が4億円減るという。

現在はNHK大河ドラマ「真田丸」ブームで多くの観光客がしなの鉄道沿線を訪れる。地元では「真田丸ブームの後をどうするか」と心配する声がある。喫緊の課題はもちろん需要だが、玉木さんの頭の中は15年後、20年後をどうするかでいっぱいだ。

設備更新、人件費上昇、そして運賃収入の自然減。これらを加味すると、「9億円くらい足りない」。不足する収入をどうやって補うか。そのために玉木さんがいくつか考えている案の一つが、マイカー通勤から鉄道通勤へのシフトを促すことだ。長野県内の主な移動手段はマイカー69%に対して鉄道は17%にすぎない。しかし、上田―長野間の所要時間はマイカーで75分のところ鉄道なら65分だ。ガソリン代よりも定期券代のほうが高くつくことがマイカーから鉄道への移行を阻む要因となっているが、「鉄道なら時間が正確、運転で疲れない、本が読めるといったメリットがあります。「自動車で通勤する人も週に1~2度はお酒を飲みたくなることもあるでしょう。それだけで鉄道の定期券を買うということはないでしょうが、こういう人たちをうまく取り込んでいきたい」。

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