筋肉少女帯は、なぜカラオケで絶唱するのか 異色のプロモーションビデオ誕生の舞台裏

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それに対して、徳間ジャパン側にも渡りに船の側面があったようだ。筋肉少女帯の担当で制作宣伝本部ディレクターの田中亮氏は語る。

「小倉さんからのお題は“絶唱メタル”を作って欲しいというもの。筋肉少女帯は昨年アニメ『うしおととら』のオープニングテーマを歌ってアニメファン層へのアピールと浸透ができた。最近ではロックフェスに声がかかることも多く、従来のファンとは違う層へ筋肉少女帯というバンドが浸透してきている。さらに別のジャンルからの支持を拡大させるには、カラオケで歌ってもらえる楽曲はチャンスだと思いました」

早速メンバーに企画を打ち明けようと思った田中氏だが、ボーカルの大槻ケンヂがのどのポリープ手術を控えていた微妙な時期でもあった。

「大槻ケンヂも大人の事情を理解してくれて、すぐに乗り気になってくれた。曲のタイトルにある箱男とはカラオケボックスで歌うサラリーマンの姿であり、安部公房の同名の小説へのオマージュ。筋肉少女帯の歌詞の持ち味である“不条理”は、サラリーマン社会の不条理とも相通じるものがあり、見事にはまりました」(田中氏)

プロモーションビデオは作り直し

こちらが初回限定版のジャケ写

アーティストサイドが乗り気になったことで、企画は一気に進展。楽曲が完成、プロモーションビデオの第一弾が出来上がるのも早かった。

しかし、最初のプロモビデオに物足りなさを感じた。

「大槻ケンヂがサラリーマンに扮してカラオケボックスで絶唱する、という内容だったが、どうもこれだけでは物足りない。そこで他のメンバーも入れてギターソロをフィーチャーするなどの工夫をしました。曲のタイトル画面や歌詞のテロップも実際にDAMで使われているものを加え、CDジャケットも実際のカラオケボックスのモニター画面を撮影し、そのまま使っているのも前代未聞です」(田中氏)

こうしてカラオケ背景映像風に徹底的にこだわったプロモビデオは「見てよし、歌ってよし」という出来栄えになった。第一興商としても、カラオケDAMそのものとタイアップする企画は初の試み。関係部署とのすり合わせには苦労があったようだ。

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