年末年始のサイバー攻撃に備えよ 緊張する国際情勢で「深刻なシステム停止を招く」DDoS攻撃のリスクが高まる!? 《昨年は金融や航空が被害に》

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そこで対策ソリューションを提供する外部のベンダーにも協力を仰いで、発生しうる事態のシナリオを描き、社内からステークホルダーを集めて、机上でシミュレーションしてみることをお勧めする。

金融、交通だけでなく医療・ヘルスケア業界も要注意

いま、大規模なDDoSを仕掛けようとする国家の目的は、「認知戦」の地ならしをして、社会混乱の種を蒔くことだ。

認知戦では、社会的な不安感をあおる事態を同時多発的に起こし、まず相手国内で情報を混乱させる。並行してSNSなどで大量のフェイク情報を流布し、何が正しい情報なのかを曖昧にすることで、自国に有利な方向に世論を誘導するのが常套手段だ。

この一見荒唐無稽に思える戦術が、いまの日本社会に十分通用することは、一部のインフルエンサー動画による誤情報の流布が選挙結果の誘導や、誹謗中傷的な世論を生んだことで、図らずも証明されてしまった。

他方、新政権と隣国との間で、政治的な緊張が昨年以上に高まっている。年末年始にサイバー的手段でも、他国が日本に威圧を与えようとするリスクを想定しておくべきだろう。社会不安は国民の生活に密着するサービスほど大きくなりやすい。

その意味では、昨年 DDoS攻撃を受けた業種だけでなく、金融なら証券やキャッシュレス決済、交通なら鉄道や運輸といった隣接業種に加え、新たに「基幹インフラ制度」に指定された医療・ヘルスケア業界も要注意だと言える。

すでに社会に撒かれた混乱の芽を丁寧に摘み取り、芽吹かせないよう地面を踏み固めていく、そのための漏れのない予防措置の積み重ねと緊急対処シナリオの再検証がこれまで以上に必要だ。

関係者には気の抜けない年末年始となりそうだが、万全の準備で備えてもらいたい。

【もっと詳しく】アジア太平洋地域への攻撃に特徴的な「レイヤ7 DDoS攻撃」に対処するには
Akamai が2024年通年で観測した、世界の金融サービスへの攻撃件数を分析したグラフを見ると、アジア太平洋地域への攻撃に「レイヤ7 DDoS攻撃」が多用されている特徴的な傾向がよくわかる。
Akamaiが2024年に観測された地域別の金融サービスに対するレイヤ7 DDoS攻撃数
Akamaiが2024年に観測された地域別の金融サービスに対するレイヤ7 DDoS攻撃数
左からAPJ:アジア太平洋および日本、N.America:北米、EMEA:欧州、中東およびアフリカ、LATAM:中南米 (画像:Akamai Technologies)
レイヤ7 DDoS攻撃は、正常なWebアクセスとDDoS攻撃との機械的な判別が難しい。日本への一連の DDoS攻撃では、攻撃を受けた各社での個別のDDoS対策が進むにつれてハイボリューム型の単純な DDoS攻撃が次第におさまっていった。
一方、レイヤ7 DDoS攻撃は、断続的に2月後半頃まで観測され続けた。理由は「アクセス集中に弱いWebサーバー」を探る攻撃の試行が続いたからだ。攻撃に必要なアクセス量が少ないと、さらに攻撃の判別が難しくなる。
そのような、システム設計者も気付かない隠れた防御の弱点を根気強く探ろうとする攻撃側の姿勢からも、日和見的ではない「威力偵察ミッション」を遂行しようとする攻撃者の意図が垣間見える。
今後は、これらの弱点探索と攻撃の試行がAIにより自動化されることで、迅速かつ継続的に情報収集活動が行われるようになるだろう。アメリカのAI企業であるアンソロピックは、中国のハッカー集団が自社のAIを、データ窃盗に使う攻撃コードの生成などに利用したと報告しており、攻撃の自動化はすでに現実の脅威となっている。
増大するレイヤ7 DDoS攻撃の脅威に対抗するには、システムのボトルネック、単一障害点となりうるサーバーの洗い出しと、攻撃を想定した処理能力の引き上げや構成変更などの検討が必要になる。
加えて、セキュリティソリューションでは、アクセス頻度を制御するレートコントロールと、AIを用いた高度なボット検知に過剰なアクセスの緩和処理、さらにそれらのツールを場面に応じて使いこなす能力を有した、外部の専門チームを活用するのがお勧めだ。とくにアジア太平洋地域に特徴的な攻撃の傾向を踏まえ、追加検討するのがよいだろう。
東洋経済Tech×サイバーセキュリティでは、サイバー攻撃、セキュリティーの最新動向、事業継続を可能にするために必要な情報をお届けしています。
中西 一博 アカマイ・テクノロジーズ エバンジェリスト

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なかにし かずひろ / Kazuhiro Nakanishi

日立グループ全体のセキュリティ設計を担当後、シスコシステムズで、セキュリティ分野のSE、プロダクトマネジャー、製品マーケティングとして従事。現在はアカマイ・テクノロジーズでクラウドセキュリティおよびクラウドコンピューティングのエバンジェリスト。ニュースや記事、セミナーで、最新のサイバー攻撃やクラウド/エッジコンピューティングの動向、最新ソリューションの仕組みと導入例などを、消費者と元情シスの視点を生かして分かりやすく解説している。

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