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SDGs啓発進める根本かおる国連広報センター所長が語る、30年までの目標達成困難でも必要な"行動"と、ポストSDGsの行方

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食料価格に加え、ロシアがエネルギー大国であることからエネルギー価格が高騰した。それに端を発し物価全体が高騰し、経済や人々の暮らしを大きく左右している。ウクライナ戦争だけでなく、ガザ紛争など世界的に戦いが増えており、大きな気候災害と同様に、それまで積み上げてきた成果が根こそぎ失われた。

こうした要因が複雑に絡み合って、SDGsの進捗に影を落としている。

根本かおる(ねもと・かおる)/国連広報センター所長。東京大学法学部を卒業後、テレビ局のアナウンサー、報道記者勤務を経て、フルブライト奨学生として米コロンビア大学に留学。同大学大学院国際関係論で修士号を取得。1996〜2011年まで国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員として、トルコ、ネパールなどで支援活動。ジュネーブ本部での政策立案も手がける。その後国連からは一度離れ、フリージャーナリストを経て、13年より現職 (撮影:尾形文繁)

──他にも要因はありますか。

圧倒的に資金が足りていないというのもある。SDGsの2030年までの達成のためには、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の前の時点で、すでに年間2.5兆ドル(約375兆円)の資金ギャップ(不足)があった。そのギャップがさらに増え、今では年間4兆ドル(約600兆円)にまで増大してしまっている。

世界の年間軍事費の総計は2.7兆ドル(約400兆円、24年)で、本来であれば開発資金や人道支援に回るべき資金が軍事費に向かっている。貧困が存在する社会は不安定化し、それが安全保障にも影響する。各国は軍事だけでなく、人の暮らしなど、人間を中心に据えて予算を捉え直すべきだ。

このように軍事費の増強・増大が(SDGs向けの)資金不足に影を落としている。平和になって軍事費が下げられる世界になれば、また成長軌道に戻ると予想される。

だが、そこまで待つのではなく、貧困拡大といった社会を不安定化させる要因を食い止めるため、開発や人道支援の側面から同時並行的に手当てしていかなければならない。国の安全保障を考えるのはそれぞれの国にとって正当で必要なことだが、同時に開発や人道支援のことも考えてほしい。

資金のほかに、政治の意思が足りていない面もある。例えば、ゴール5の「ジェンダー平等を実現しよう」は、今の進捗スピードでは、先進国でのターゲット達成は目標年の30年には1つもないと見込まれている。もっと加速的に取り組んでいかなければならないという各国の判断・決断が必要だ。

実際の取り組みが求められる

──SDGs達成に向けて日本の取り組みの課題も多そうです。

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