資産を相続できない?突然死による「デジタル遺品トラブル」、企業は業務ストップや裁判沙汰のリスクも!正しい対策と専門事業者の選び方

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ところが、担当者の死去により認証ができず、誰もサーバーにアクセスできなくなり仕事が回らなくなったのだ。幸い、このときは担当者の私有のパソコンからパスワード情報の手がかりを見つけ出し、3カ月程度の調査を経てデータ復旧に成功したという。

「こうしたトラブルが起きたのは、その企業がシステム管理を1人に依存していたことが要因です。従業員が数十人程度の中小企業でも、必ず2人以上で管理する体制を築くべきです」

下垣内氏は、ある公的機関でも同様のケースに対応している。やはりシステム担当者が1人しかおらず、その担当者の死去によりプロジェクト用のファイルサーバーにアクセスできなくなったため、解析作業を依頼されたという。

しかし、この公的機関は下垣内氏に依頼する前に、サーバーメーカーのサポートを得ながら設定情報を初期化していた。調査の結果、この作業に不備があり、重要なデータが消えてしまっていたことが発覚したそうだ。

「時折、サーバーメーカーのサポートが案内を間違えてしまうことがあるのです。また、パソコンメンテナンス業者や修理業者が提供するデータ復旧サービスでは、市販のデータ復旧ソフトを使用するだけというケースもあります。そうした業者が復旧ソフトの使い方を間違えてしまい、取り返しがつかなくなることもあります」

データにアクセスできなくなったときには「安易にいじらないほうがいい」ということだ。よかれと思って取り組んだ作業が、のちの専門家による調査を困難なものにしてしまいかねない。

「デジタル・フォレンジックに関する専門家で構成されているNPO法人デジタル・フォレンジック研究会のホームページには、フォレンジック調査・解析業務を行っている会員企業や、CDFP-P(デジタル・フォレンジック・プロフェッショナル認定の実務者資格)の有資格者が在籍している企業が紹介されています。企業の方も個人の方も、もしデータにアクセスできなくなった際には、こうした情報を基に信頼できる専門事業者を探してもらえればと思います」

企業にとってデジタル遺品対策は「BCP」だ

従業員の突然死でトラブルが起きるのは中小企業だけではない。下垣内氏は、ある大手企業が、過労で自殺した従業員のパソコン内のデータを消去してしまったために、自殺の真相を知りたい遺族と裁判沙汰になってしまったケースにも関わったことがある。

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