富士通から教壇、ハーバード教育大学院へ「異色の経歴」を持つ教員のキャリア観 TOEIC940点でも通用しなかった挫折感が原点

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「ハーバード」という名前が頭によぎったのは、ベトナムで働いていた時期です。日本の教育をよくするには圧倒的な知見と経験が必要だと思い、世界の最高峰であるハーバードに行くんだという思いが自分の中で盛り上がりました。その後、2022年に父が66歳で亡くなったことで人生の終わりを意識するようになり、「やり残していることはないだろうか」と自問した際に、ハーバードへの思いが再燃しました。

生成AIの登場により、効果的に活用すれば生徒一人ひとりのニーズに応える学習が可能になるという期待感がある一方で、教員がこのツールを活用するか否かが、学びの格差につながりかねないという危機感もあります。

自らのAIを活用した実践を研修会や講演会などでお話しする機会をいただいたのですが、本当の意味で先生方に腹落ち感を持っていただくには学術的な裏付けが必要であると考え、大学院でより効果的な活用手法や普及戦略を学びたいと考えています。生成AIを活用することが、生徒の認知能力と非認知能力にどう影響するかについても研究する予定です。

――大学院進学のための試験対策や留学準備はどのように進めたのですか。

英語試験のスコアアップ対策は3年ほど前から始め、その後は推薦書、エッセイ、奨学金の申請などを同時並行で進めていきました。ハーバード教育大学院の場合(2025年度入学)、入試は現地に行く必要はなく、エッセイなどの提出物をオンラインで送る形になります。奨学金の申請は、複数の財団にエントリーし、それぞれ異なる審査基準や面接があったため、自分の考えを明確に言語化する上で最も時間と労力を要しました。

出願準備では、ChatGPTを家庭教師として活用しました。具体的には面接官やアドミッションオフィス(入学審査部門)の役割を担ってもらい、模擬面接やエッセイの添削に役立てました。エッセイでは、自分の人生について述べる中で、「なぜあなたが」「なぜハーバードに」「なぜ今、入学する必要があるのか」という3つの「Why」に答えなければなりません。

過去の合格者のエッセイと自分のエッセイのどちらが優れているかを、ChatGPT、Claude、Perplexityの3つの生成AIに質問し、3つ全てが自分のエッセイの方がいいと回答するまで修正を繰り返しながら、内容をブラッシュアップしていきました。

――徹底的に生成AIを活用されたのですね。教員の業務との両立は大変ではなかったですか。

高校3年生の担任をしていたのですが、大変ながらも楽しく両立ができました。私自身も受験勉強に取り組んでいたため、その経験を生徒たちの指導に応用できたんです。例えば、英語の志望理由書を準備する中で学んだ、論理的な英文の書き方や効果的なフレーズを、推薦入試などで志望理由書が必要な生徒たちに具体的に伝えることができました。

――では、大学院卒業後の展望をお聞かせください。

海外で高度な教育理論や指導法を学んだとしても、それが生徒の成長につながらなかったら意味がないと思うので、まずは学校現場に戻るつもりです。大学院で学んだ知見を日本の学校現場で生かすにはどうすればいいのかを検証しつつ、その成果や課題を全国の先生方と共有しながら、現場からのボトムアップで日本の教育をよくする活動ができればと考えています。

【関連記事】高校英語で「生成AI」をフル活用、個別最適化で書く・話す授業が激変した実践例

(文:安永美穂、注記のない写真:本人提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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