「生徒の半分が中国人」鴨川令徳高校が留学生を受け入れる理由、日本人生徒への影響は? 「欧米より学費が安く、教育の質が高い」と人気

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中国人留学生を受け入れる高校が増えている。2014年ごろから留学生を受け入れ始めた千葉県の鴨川令徳高等学校では、いまや中国人留学生の割合は5割にものぼる。無理に留学生を受け入れることはしていないが、日本人生徒にとってもプラスの効果があるという。同校の磯野能士校長と耿穎先生に、中国に詳しいジャーナリスト 中島 恵氏が取材した。

文部科学省「高等学校における外国人留学生(3か月以上)の受入れについて」によると、2021年度の中国人留学生数は448人、2023年度は869人(隔年調査)。全外国人留学生の中で最も多く、コロナ禍のこの2年でみても2倍近くに増えている。

一方、文部科学省によると、2010年には121万人を記録した15歳人口は、2023年には108万人にまで減少、4年後の2029年には99万人と100万人を割り込むことが確実視されている。少子化が深刻化する中、多くの高校が生徒の定員確保に頭を悩ませている。

現在は半分が中国人留学生

中国人留学生を積極的に受け入れている高校は、どのようになっているのか。筆者は4月下旬、千葉県鴨川市にある鴨川令徳高校を取材した。同校は全生徒のうちおよそ半分を中国人留学生が占めており、中国人の受け入れが屋台骨を支えている。

校舎のすぐ前に太平洋が広がる
(写真:中島氏撮影)

東京駅からJR外房線の特急「わかしお」に乗って2時間以上。のどかな景色が広がる「安房鴨川」駅で下車して5分ほど歩くと、太平洋からわずか11メートルという風光明媚な場所に同校はある。

1929年に女学校として開校したのち、数回の校名変更を経て、2020年に学校法人令徳学園によって設立された。2025年4月現在、全校生徒は100人(男女共学)。その半数の50人が中国人留学生だ。

同校が留学生を受け入れるようになったのは、2014年ごろ。前身である「文理開成高校」の時代だ。当時の校長の「国際色豊かな学校にしたい」との考えから受け入れを開始した。受け入れを開始した時点では、中国人に限って募集をしたわけではなかったが、「欧米より学費が安く、教育の質が高い」という理由で、予想以上に中国からの応募者がやってきた。

募集は日本にある中国系教育エージェントや上海にある同校の連絡事務所を通じて行い、開校以来、この5年間で90人以上を受け入れてきた。

「質が高い留学生に来てほしい」

ただし、比率の調整を進めるようだ。今年4月に就任した磯野能士(よしひと)校長は「5年前も現在も3学年を平均して見れば中国人比率は5割で変わっていませんが、4月に入学した1年生は35人中13人と約3割です。中国人留学生を増やすことが目的なのではなく、やる気があって質が高い留学生に来てほしい、日本人生徒にもいい影響を与えたいとの思いから、面接などを重視した結果です。来年度以降も、このバランス(7対3)を保ちたいと考えています」と語る。

磯野能士校長(右)と耿穎先生(左)
(写真:中島氏撮影)

中国人留学生は中国国内で英語と数学の筆記試験、面接を受け、それにパスした学生が留学ビザを取得して来日するという流れ。日本語能力試験のN3(日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベル)を取得してくることを求めているが、必須条件というわけではなく、「あくまでも本人の意志や意欲などを面接で見極めて決めている」(磯野校長)。彼らは中国の中学を6月に卒業後、半年間、現地の日本語学校などで日本語を学んでから4月に来日するケースもあれば、卒業後、日本の2学期(9月)に合わせて来日するケースもある。

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