「生徒の半分が中国人」鴨川令徳高校が留学生を受け入れる理由、日本人生徒への影響は? 「欧米より学費が安く、教育の質が高い」と人気

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そのため、同校の留学生担当で教師の耿穎(こう・えい)氏が日本語の補講を行うなど、日本の高校の授業についていけるようサポートを行っている。「留学生は相対的に同校の日本人生徒より英語と数学の成績がよい」(磯野校長)が、中には日本語に不安がある留学生もいるからだ。

耿氏によると、留学生の出身地はさまざま。北京市、上海市、江蘇省、浙江省、広東省、福建省、遼寧省、山東省など全国に広がっている。

中国の00后(リンリンホー=2000年代生まれ)は経済的に豊かな時代に生まれ、一般的に甘やかされて育っている一人っ子が多いと言われているが、そうした世代の特徴は同校の留学生にも見られるという。

1年生の現代国語の授業の様子
(写真:中島氏撮影)

とはいえ、15歳という年齢で親元を離れ、日本留学をするのは勇気がいるはずだ。耿氏は「以前は日本のアニメやゲームが好きだから」といった漠然としたものが多かったが、最近では変化が見られ、「日本の高校や大学でしっかり勉強したい。将来はこのまま日本に住み、日本で働きたい、という明確な理由を挙げるしっかりした学生が増えています」と話す。

中には、中国の受験競争についていけなかったり、勉強が不得意だったり、学校に溶け込めなかったという学生もいて、決して成績優秀だったとはいえない学生もいるが、日本留学することで自身の環境を変え、心機一転、やる気を出して、成績が向上したり、見違えるほど明るくなる学生もいるそうだ。

「中考分流」の影響

近年、高校の段階で日本を目指す中国人留学生が増えている背景には、「中考分流」の影響もありそうだ。

「中考分流」は、中国で2018年ごろから開始された制度。これは、あまりにも増えすぎた大学生を抑制し、若者にさまざまな職業に就いてもらうための制度で、中学卒業の時点で、一定の成績を収められなかった学生を、職業専門学校や中等専門学校(日本の高等専門学校に相当)に仕向けさせるというものだ。

校舎の裏にビーチバレーのコートがある
(写真:中島氏撮影)

大学生の就職難が深刻化する中で、政府はこれを徹底しようとしている。しかし、「学歴がなければ将来がない」と考える保護者や若者がそれに反発。その結果、経済力のある家庭の子どもの中には、高校進学時点で海外留学を選択するという現象が起きている。

一方、受け入れる日本の高校側にとっても、学生の確保は収益構造の改善につながる。冒頭に書いた通り、日本の少子化は歯止めがかからず、全国各地で公立、私立ともに定員割れが起きている。

今回取材した鴨川令徳高校も、国際化を目指すだけでなく、経営の安定という側面も考慮して中国人留学生を受け入れたことは否めない。それでも定員(90人)にははるかに及ばず校内には、使われず、余っている教室が複数ある。

しかし、無理に留学生を受け入れることはしないという。

中国人留学生が増えすぎると、彼らだけでつるむ、つまり、校内に彼らだけのコミュニティができてしまい、日本語をしゃべらなくなってしまったり、秩序を乱したりする可能性があるからだ。

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