「相性悪いから友だちやめる」MBTI誤解に波紋、教員が児童生徒に適用する例も 不安で不眠症になることも、低年齢ほど影響大

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「日本に来て衝撃を受けたのが、人と比較することで自分を評価する人が非常に多いことです。それが、自己肯定感を低くしているのではないかと思いました。だからこそ、自分だけに焦点を当てる分析方法で、その人の人生の羅針盤となるようなフレームワークを日本に提供したいと考えたのです。日本人が素晴らしいのは、状況に応じてペルソナ(役割性格)を使い分けられるところ。例えばドイツ人を対象にMBTIを実施した時、ペルソナ(役割性格)という概念はなかなか理解されませんでした。日本人は、たくさんのペルソナ(役割性格)を身につけているからこそ、軋轢を避けて過ごすことができるのでしょう。一方で、ペルソナ(役割性格)に偏重するあまり自分自身を見失いそうな人にも多く出会ってきました。だからこそ、本来のキャラクター(性格)を知ることで、もっと意識的にキャラクター(性格)とペルソナ(役割性格)を行き来したり、さらに自分を生かしたペルソナ(役割性格)の表現ができたら、ストレスの減少につながると考えました」

自我が確立しない子どもに「レッテル」を貼る恐ろしさ

教員は、さまざまな児童生徒の成長を見守る仕事だ。当然、子どもたちは一人一人違うものの見方をしており、教員とも異なる捉え方をしているだろう。教員は、どのような視点を持っておくといいのだろうか。

「自己理解の深さは、他者理解の深さとイコールです。自分自身の認知に偏っていると、自分と違うものの見方をする子どもを低く評価してしまう可能性もあるでしょう。しかし、“心の利き手”が違うということは、異なる言語や世界観で生きているようなもの。これがわかると、子どもが見ている世界を誤解することなく捉えることができ、自分の偏見を通さない新しい視点で、その子自身を評価できるようになります。また、人間には“意識”と“無意識”の2つの領域がありますが、自己理解を深めて“意識”の領域が広がれば、自分でコントロールできる感情や言動の範囲が広がり、安心して人と接することができます。感情は転移するものなので、教壇に立つ先生の心理的安全性は、子どもたちの安心感にもつながるのではないでしょうか」

自分は何者なのか、相手はどんな人なのか。それを知りたいと思うのは当然のこと。しかし、人間の心は一概に言い表せるものではなく、人と人との関わりも「相性」で片付けられるものではない。

「人は、『目がきれいですね』と言われると、そこを強調するようにアイメイクがどんどん濃くなっていくというエピソードがあります。このように人間は、一度『あなたはこういう人間です』と言われると確証バイアスが働いて、自分でも無意識のうちにその特徴を強めてしまうものなのです」

心理検査を誤ったかたちで取り入れると、自分自身を見失ってしまう可能性がある。自我が確立する前の子どもたちはなおさら、こうした事態に陥りやすいだろう。自分や相手に、手軽にレッテルを貼ってしまうことの恐ろしさを、まずは大人がしっかり把握しておく必要がありそうだ。

(文:吉田渓、注記のない写真:Graphs / PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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