「相性悪いから友だちやめる」MBTI誤解に波紋、教員が児童生徒に適用する例も 不安で不眠症になることも、低年齢ほど影響大
訴えの多くが10〜20代の若年層からで、中には小学生の子どものそうした事態を心配する保護者からの相談もあるという。
「本来、MBTIは人のいいところに焦点を当てるものです。多様性を理解し、受け入れ、補償しあう指針を得てもらえるよう開発されたフォーマルアセスメントです。MBTIでは、自殺しやすさや貧乏になりやすさなどはまったく見ていませんし、人と人の相性を判断するものでもありません。
そもそも、自我がまだ確立していない若年層は、MBTIをはじめ、各年齢対象の心理検査以外を受けてはいけないのです。MBTIや多くの心理テストは成人用です。これは、自我が確立していないうちは、心理検査の結果を妄信して翻弄され、自分を見失ってしまう危険性があるからです。それにもかかわらず、学校によっては、先生が児童生徒に16Personalitiesの無料診断を受けさせ、一緒になって盛り上がったり、人間関係や成績とリンクさせたりする事例もあると聞いています」
差別やいじめに発展するケースもあり、同協会は寄せられた情報を取りまとめて文部科学省にも共有しているという。
では、元来のMBTIとはなんなのか。多くの心理検査は、その人の行動特徴の“程度”を見て測定するが、MBTIはその人の「認知スタイル」を見るメソッドだ。
心理学において、「人間の性格」には「パーソナリティ(人格)」と「キャラクター(性格)」の2種類があるとされる。パーソナリティ(人格)とは、「仮面」を意味する「ペルソナ(役割性格)」が語源で、家庭や社会、国などに適応するために身につけた後天的な行動特性や表現方法のこと。一方でキャラクター(性格)とは、その人が生まれ持った、先天的に刻み込まれた気質や特性のことだ。
「MBTIは、キャラクター(性格)を見るものです。一般に検査手法には『特性論』と『類型論(タイプ論)』がありますが、16Personalitiesは特性論、MBTIは類型論です。皆さんに馴染み深い『偏差値』は、特性論に当てはまりますが、その集団における位置はわかっても、その人自身に焦点を当てることはありません」
例えば、ある人が日本では「すごく明るい人」と判断されても、陽気な人が多い国では「普通の人」と判断されるかもしれない。それは本人の性格が変わったからではなく、基準が変わったからだ。このように特性論は、周囲との比較で判断する手法だと言える。
「一方で類型論は、“もうこれ以上は分けられない”というところに類があると考えます。何かと比べたり、良し悪しを評価したりはせず、ひたすらその人自身に焦点を当てるのです。MBTIは類型論なので、その人がどんな認知スタイルを持つか、それ自体を探っていきます。これを、MBTIの有資格者の支援のもとで行うのです」
では、その認知をどう調べるのか。前述のように、MBTIはユングの心理学的タイプ論に基づいて、性格を16のタイプに分類する。ユングは、人間の心が動くときは「知覚機能」と「判断機能」のいずれかが関わっていると捉え、「知覚機能」には①感覚機能と②直観機能、「判断機能」には③思考機能と④感情機能があるとして、心的機能を4つに分類した。
そして、これら4つの心的機能がそれぞれ、その人の外側の世界に向かって働くのか、内側の世界に向かって働くのかによって2つに分け(計8パターン)、さらにこの8パターンのうち、どれを自然と使っているか、あまり使っていないかによって、16タイプに分けた。