輸出の不調は製造業の不調と同義だが、にもかかわらずドイツでは株価が堅調に上昇しているというパズルがある。 ドイツの代表的な株価指標であるドイツ株価指数(DAX)は2022年の後半にボトムを付けた後に上昇へ転じ、最高値の更新が続いている。その勢いは2025年に入ってさらに加速、足踏みが続く日本やアメリカの株価と対象的だ。
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なぜドイツの株価は好調なのか?
マクロ的には、ECBによる利下げやユーロ安が株高の追い風になっている。また引き続きインフレ率も2%を超えており、企業業績が全般的に好調なことも株価の好材料だ。後述するように、新政権の下で財政拡張がなされることの期待も株高を演出している。
一方で、セミマクロで動向を確認すると、上昇の牽引役はソフトウェア、銀行、保険サービス、金融サービス、通信関連などであり、伝統的な製造業は含まれていない。製造業で順調なのは軍需関連くらいだ。
つまりセミマクロの観点に立てば、ドイツの株高はAI(人工知能)ブームであり、長期金利の上昇を受けた金融業の牽引を受けた現象であることがわかる。一方で、ドイツを代表する化学工業や自動車工業などの製造業は、株価が低迷している。そうした業種ではリストラが進行中であり、今後はより大胆な雇用調整が行われる可能性も意識される。
さらにロシアとウクライナの停戦が視野に入り、欧州連合(EU)各国で防衛費が膨らむ観測が高まったことも、株価を押し上げている。欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が防衛費を政府支出の制限外とすることを提案していることも軍需関連株の急騰につながっている。しかし、これは国民生活を豊かにする動きではない。
つまるところ、ドイツは不況下での株式バブルの様相を呈している。好景気であれば、株価が底割れしても、企業部門はそのショックを消化できる。しかし現在のドイツは不景気であるため、株価の暴落が生じた場合、その総需要へのショックを企業部門が吸収できない恐れが大きい。仮にそうなれば、企業部門のさらなるリストラにつながる懸念もある。
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