秋田県の超難関大「国際教養大学」の学長が語る、価値創造人材に必須の3要素 「英語を学ぶ」のではない、「英語で学ぶ」強み
広範な知識を養うGSではサステナビリティーを導入、GCでは先端科学技術と人文科学を学べるなど、DXやGXが重視される時代にマッチしたカリキュラムとなっている。GBではそれらをビジネスとして展開していくための素養を学ぶが、とくに数理分析に力を入れているという。
「経済的価値に囚われず新しい価値を生み出すためには、デザイン、テクノロジー、データサイエンスが必須だと考えています」とカセム氏は強調。また、今や先進国だけでなく、人口の多いグローバルサウスの国々の力も無視できなくなっていると指摘する。
「最近はコンサル系企業に就職する学生も増えていますが、そうした会社は少数の人間に高い給料を払うようなところが多い。しかし、国際社会全体の水準を引き上げるためには、日本とグローバルサウスの架け橋となるような仕事も欠かせません。日本人はあまり自覚がありませんが、日本は災害リスクに対する知見などが豊富なサイエンス大国です。そうした日本のサイエンスや文化を世界に発信できるような人材を育成していきたいです」
「国際的なイノベーションハブ」になる
同大のキャンパスは秋田県にある。地方を嫌がる学生も少なくないが、アメリカの名門大学は大抵、地方の郊外にあり、勉強に集中できる環境が整っている。同大も同様だ。といっても、秋田空港からは車で10分弱、東京からは飛行機で1時間程度しかかからない。このアクセスのよさをPRして国際的なイノベーションハブになっていきたいとカセム氏は意気込む。

「秋田県は、2028年には自然エネルギーの国際的な拠点になっていると思いますが、県内でそのエネルギーを消費する産業がまだ十分ではありません。本学を拠点にイノベーティブなスタートアップ企業を根付かせるのが、次の長期計画の基本方針です。2021年には『秋田県における人材育成の活性化を目的とした産学金連携に関する協定』も締結しており、卒業生と学生もつなぎながら新しい産業をつくれるような人材を育てていきたい。また、欧米の名門大学院に進む学生も多いのですが、国内や地元にも優秀なグローバルタレントをつなぐ必要があると考えており、東北大学や奈良先端科学技術大学院大学との連携もより深めていきます」
多くの実績を残してきた国際教養大学。カセム氏は今後の大学のビジョンについてこう語る。
「リベラルアーツを学ぶ強みは、知の基礎を学び、それを統合して応用できることにあります。AILAをあらゆる側面で成し遂げ、1つの教育手法として世界に発信していきたい。また、本学は教育には強いのですが、課題は研究が弱いところ。エデュケーション(教育)は本来、ティーチング(教導)とリサーチ(調査研究)の融合でなければなりません。お互いが進化し、刺激し合わなければ教育は前進しないのです。大学院の高度化・強化は今、そのシーズをまいている段階で、これをいかに大きく育てるかがこれからの課題となるでしょう」
(文:國貞文隆、写真:国際教養大学提供)
東洋経済education × ICT編集部
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