秋田県の超難関大「国際教養大学」の学長が語る、価値創造人材に必須の3要素 「英語を学ぶ」のではない、「英語で学ぶ」強み
ちなみに寮費は55万4600円(2023年度)必要になるが、これには11.5カ月分の家賃、長期休業期間などを除いた8カ月分の食費(1日3食)、退去時清掃費、光熱水費、冷暖房費などが含まれている。東京での大学生活を考えれば、割安と言えるだろう。
同大のCLA+(書く力と批判的思考力を定量的に計測するアメリカのテスト)の結果によると、卒業時の学生の「データ・リテラシー能力」はアメリカの学生平均を上回っており、「論理的に書く力」と「問題解決力などの応用力」においてもアメリカのノン・ネイティブ(母語が英語でない)学生の平均を上回っているという。
現在の入試偏差値は、60後半~70台とトップクラス。早稲田、慶應、ICUなどと同格と見られているが、一定の基礎学力に加え、多彩な能力を備えた学生を選抜するため、入試はさまざまな工夫をしている。
例えば、入学前のボランティア活動などを評価する「ギャップイヤー入試」、問題解決型合宿での活動を評価する「グローバル・ワークショップ入試」など16種類もの多岐にわたる入試制度を用意しているのだ。入学時期は、4月と9月の年2回で、最大6回もの受験機会がある。
「自身の考えを問うような入試にしており、学力だけではなく資質やポテンシャルを重視しています。その結果、基礎学力の高い受験生がたくさん集まってきます」とカセム氏は話す。
独自の選抜や教育の結果、進路実績でも成果を挙げており、就職先は三菱商事やトヨタ自動車、ソニーなど著名企業が名を連ねている。「配属先を見ると国際的な部門が多く、各企業の今後の展開に貢献している印象が強い」とカセム氏。大学院進学においても東大・京大だけでなく、オックスフォードやケンブリッジ、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)、フランスのINSEAD(インシアード)など名門大学に人材を送り込んでいる。
「デザイン・テクノロジー・データサイエンス」が必須
開学から20年。3代目学長のカセム氏(元立命館アジア太平洋大学学長)は、先行き不透明な時代を踏まえ、リベラルアーツの中に学際的専門性を取り入れるべく、2021年度から「応用国際教養教育」(Applied International Liberal Arts: AILA=アイラ)」を導入した。社会課題を解決していくための統合知と人間力を強化することが狙いとなっている。

国際教養大学理事長・学長
1947年スリランカ生まれ。スリランカ大学卒業後、1972年来日。東京大学大学院で都市工学を学び、三井建設、国際連合地域開発センターなどを経て1994年立命館大学教授に就任。立命館アジア太平洋大学学長、学校法人立命館副総長、大学院大学至善館学長を歴任。2016年瑞宝中綬章を受章。2017年スリランカ政府より国民英雄(Vidya Nidhi)の称号を授与された。専門は環境とライフサイエンス。2021年6月から現職
「西洋社会は思想に価値を置いてきましたが、世界の新興国や発展途上国では物事はやって見せて証明しなければ信用してくれません。新たな価値の創出には、思想を行動につなげることが大切です。例えば、本学が所在する秋田県の社会課題を解決できれば、その手法をグローバルに展開することも可能となるでしょう。そうした力を養うため、グローバル・スタディズ(GS)、グローバル・コネクティビティ(GC)、グローバル・ビジネス(GB)という3つの学際的領域から1つの領域を選択する形で専門教育を展開しています」