地球温暖化抑止のCOP29、「気候資金」確保が焦点 WWFジャパン・小西雅子氏に課題と展望を聞く

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――実際にはどのような議論が想定されますか。

2021年にイギリスのグラスゴーで開催されたCOP26では、2022~2024年にかけて、気候資金に関する新たな目標であるNCQG(New Collective Quantified Goal=新規合同数値目標)を議論することが決まった。

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局によれば、途上国が気候変動対策を進めるためには、2030年までに累積で5.8兆~5.9兆ドルが必要であると推計されている。そうした中で、途上国側は気候資金として年間1兆ドル以上を目標とすることを求めている。そして、その資金源として民間ではなく公的資金を中心とすることを強く要求している。

こにし・まさこ/中部日本放送アナウンサーなどを経て、2005年から国際環境NGOであるWWF(世界自然保護基金)ジャパン勤務。現在、WWFジャパン専門ディレクター(環境・エネルギー)。昭和女子大学大学院特命教授、京都大学大学院特任教授、東邦銀行社外取締役も務める(写真提供:WWFジャパン)

これに対して多くの先進国は大規模な数値目標の提案には後ろ向きで、公的資金だけでなく、民間資金の動員や開発銀行の改革などの重要性を主張している。

また、資金の出し手をどこまで広げるかも大きなテーマだ。先進国側は、中東の産油国や世界最大の温室効果ガス排出国となった中国など新興国も資金の提供者となるべきだと主張している。加えて先進国は、資金の提供先を気候変動の影響を最も受けやすい、小島嶼国などの脆弱な国に限定したいと考えている。

これに対して途上国側はすべての途上国が資金を受け取れる権利を持つべきだと主張している。気候変動の緩和や適応、損失と損害(ロス&ダメージ)といった分野にどう分配するかも大きなテーマだ。

温室効果ガス削減目標の引き上げも急務

――わずか2週間の交渉期間でどこまで合意できるのでしょうか。

合意は容易ではない。資金メカニズムがきちんと動かなければ、途上国側としては、国が決定する貢献(Nationally Determined Contribution=NDC)と呼ばれる温室効果ガスの排出削減目標の引き上げは難しい。

パリ協定が目指す、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑えるという長期目標のためにはNDCの引き上げが必須だ。気候資金で意味のある合意ができなければ、途上国の資金や技術支援を条件とするNDCの引き上げは困難になる。

――気候変動問題はどれだけ切迫しているのでしょうか。

国連環境計画はCOP29に先立つ10月24日、“Emissions Gap Report2024”(排出ギャップ報告書2024年版)を発表した。同報告書では、現在の排出削減努力のレベルにとどまった場合、今世紀末には地球の平均気温が3.1度上昇する可能性があると明示された。

目標とする1.5度との開きは大きく、排出削減対策の強化が必要だ。そのためCOP29では、新たな2035年の削減目標に向けていかにNDC引き上げへの機運を高められるかがもう一つの重要なテーマだ。

パリ協定では、5年ごとに新たな排出削減目標(NDC)を掲げ、かつ次の期間の目標は以前のNDCを上回ることが義務となっている。取り組みの進捗確認をするプロセスである「グローバル・ストックテイク」の成果文書では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の示した「2035年までに温室効果ガス排出量を2019年比で60%削減することが必要」との文言が入った。

日本を含む各国は遅くとも2025年2月までに新たな削減目標をパリ協定事務局に提出しなければならない。日本は先進国の一員として世界平均の削減率を上回る削減目標を提示すべく、COP29でも前向きな姿勢を見せてほしい。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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