パンデミックで誕生「コロナ長者」の夢と現実 長者の資産はピーク時から平均して58%も減少
約20年前のドットコムバブルの愚かさを連想
米ピッツバーグの投資会社ボケ・キャピタル・パートナーズの創設者キム・フォレスト氏はロックダウン(都市封鎖)に伴う外出自粛・禁止措置の恩恵にあずかった企業を巡る熱狂を目の当たりにし、約20年前のドットコムバブルで感じた愚かさを連想せずにはいられないという。
当時買われていた銘柄は「是が非でも解決が必要なニッチ(隙間)を埋めるものだったが、長期的なものではなかった。投資家は成長を求めており、在宅勤務にこれ以上の成長はない」と話す。
米テスラのイーロン・マスク氏であれソフトバンクグループの孫正義氏であれ、世界中でインフレと闘う中央銀行が利上げを進める中で、その影響を免れた資産家はいない。世界株の指標MSCIオールカントリー世界指数は今年約25%下落している。
だが、コロナ長者の資産急減ペースは、2008年の金融危機や1929年に始まった世界恐慌でしか見られないようなものだ。
先月末時点でバンセル氏の資産は37億ドル。ピークからの減少率は75%だ。ユアン氏は46億ドルと84%急減。カーバナ共同創業者のアーニー・ガルシア氏の資産はピーク時の218億ドルから9月末時点で40億ドルと、82%減った。
コロナ長者58人のうち、26人がアジアの市民権を持ち、18人が米国もしくはカナダ出身だ。欧州人は10人。女性は2人だけで、インドで初めて女性が主導したユニコーン(評価額が10億ドル以上のスタートアップ)として株式上場を果たした美容系の電子商取引サイト、ナイカの創業者ファルグニ・ナヤル氏と、英ベット365グループの共同CEOで筆頭株主のデニス・コーツ氏だ。
コロナ長者の事業は大きく7つのカテゴリーに分類される。58人の半数余りが、在宅とリモートワーク、電子商取引に関連。3分の1がワクチンから人工呼吸器に至る製薬・ヘルスケア業界の企業絡みだ。
米ノースカロライナ大学のペイジ・ウィメット教授は、特にワクチンのイノベーション(技術革新)を成し遂げた人々らがもたらした「経済的利益は計り知れない」と指摘し、「彼らは絶対報われるべきだった」と語る。