「休日の部活動の段階的な地域移行」23年度にも、先行する渋谷区の実際 「渋谷ユナイテッド」設立し合同部活動スタート
こうした中、持続可能な部活動運営を目指すため、渋谷ユナイテッドでは22年2月にビズリーチを通じて最高執行責任者の公募を行った。現在は、代表理事が元教育長のため、学校や教育委員会の事情も理解でき、学校との連携もしやすい。だが、総合的な地域クラブを目指すには、スポーツビジネスやスポーツクラブ経営といった民間的な手法が必要になるからだ。現在、応募者の中から選考を行っているという。
渋谷ユナイテッドの発足は、決して満を持してのスタートではなく、むしろ現状の子どもたちのニーズに対してスピーディーに応えるために渋谷区長のトップダウンで始めたものだった。外部指導者が充足するのを待っていてもニーズには応えられない。このままでは教員の働き方改革にもつながらないし、子どもたちの公立離れにもなっていく。それならば「全部変えてしまおう」ということで、渋谷ユナイテッドが設立されたのだ。

(撮影:今井康一)
「全国的にも部活動の地域移行が進められているが、現時点では渋谷区のように自治体が主導して行っている例はほとんどない。自治体が本腰を入れて取り組まないと、教育委員会との連携も図りがたく、1つの学校だけで解決しても、近隣の学校との合同部活動にすることは難しい。ましてや、大会参加という規程の問題も整備できない。地域移行については、『自治体としてどう絡むか』という点が重要になってくる」
こう田中氏が話すように、地域連携は学校だけでなく既存の地域クラブ、地域企業やその地域に関わる人々など、多くの要素が絡み合っている。それらをつなぐ存在として、自治体が果たす役割は大きいというわけだ。
「ニーズに合わせて、いろいろなハブを持ちたい」という渋谷ユナイテッドが子どもたちに広く受け入れられることにより、支援する企業も増えて地域へと広がり、本当の意味での「地域クラブ」へと発展していくのだろう。23年度から本格的に始まる「部活動の地域移行」への、1つのモデルケースになっていくことを期待したい。
(文:相川いずみ、注記のない写真:渋谷区提供)
東洋経済education × ICT編集部
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