「休日の部活動の段階的な地域移行」23年度にも、先行する渋谷区の実際 「渋谷ユナイテッド」設立し合同部活動スタート

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渋谷ユナイテッドの運営については、現在は渋谷区の公費で賄っている。部活動の参加費用(教材費など)は、今年度から区立中学校における部活動の費用と同額の年額1万円前後を利用者から徴収していく予定だ。

「今後は協賛企業から資金提供などもしていただき、できるだけ公費負担を減らしていきたい」と田中氏が話すように、企業連携は今後の大きなカギとなっていきそうだ。

部活動をアスリートのセカンドキャリアの場に

渋谷区が目指すのは、持続可能な総合型地域クラブとして、渋谷に関わる幅広い世代へのスポーツや文化活動の機会の提供だ。だが、それに欠かせないのが企業をはじめとした外部の協力である。

「渋谷区に関わる方々に、個人として地元でボランタリー(自発的な)活動として参加していただくほか、企業にもSDGsの『持続可能な教育活動』という意味で協力していただきたい。そうすることで、全国の部活動や子どもたちのスポーツ・文化活動というのはもっと伸びるのではないか」と、田中氏は話す。現在も、渋谷区の教育活動などを支援しているミクシィやサイバーエージェントなどの企業が、専門指導員として渋谷ユナイテッドの指導に当たっている。

さらに、今後進めていく中で検討されているのが、人材バンクの開設だ。「部活動は、競技を引退した後、関連した仕事に就きたいと思っているアスリートのセカンドキャリアとしての場になる。指導者資格を取得していただくことで働く場を提供できるし、そうしたアスリートの部活動指導を助ける企業があれば、新たな人材確保の方法になる」(田中氏)という。

そして、学校の部活動の顧問や技術指導員不足の問題についても、この人材バンクから派遣することで解消できる。学校現場をよく知る渡辺氏も、「学校では複数の部活動を1人の教員が兼任しているケースもある。子どもや保護者のニーズに応えつつ、部活動を存続させるためにも、教員の負担を軽減できるシステムをつくっていくことを、この部活動改革で目指していきたい」と期待を寄せている。

自治体主導で行うことで部活動を大きく改革できる

文科省が提唱する「部活動の地域移行」は全国的な課題となっているものの、その進め方は自治体や学校によってまちまちだ。

「地域移行にも、さまざまなパターンがある。その1つが、総合型地域スポーツクラブの方々に学校をサポートしていただく『学校単位ごと』のもの。そして渋谷区が進めているのは、『渋谷区全域を地域』として捉え、渋谷ユナイテッドが総合的な受け皿となっていくもの。ボランタリーの指導者だけでなく、民間企業やプロフェッショナルの人材を含めて部活動の指導を行っていくことを目指している」

こう話す田中氏が一方で感じているのが、「渋谷区だけがやってもどうしようもない」ということだ。例えば、中学校における部活動では大会出場などの活躍の場も重要だが、学校単位での出場が基本なため、合同部活動が参加できるようにシステムが変わっていかなければ大会に出場できない。渋谷区だけが部活動改革を進めても、振り向いたら誰もついてきていないということにもなりかねない。「部活動を地域移行した場合、中体連大会への参加規程の整備、教員が継続して指導する場合の仕組みづくりなどは区や学校だけでは対応できるものではないし、国の財政支援なども増やしてほしい」と、田中氏は懸念を話す。

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