約20年の実践に自信、早稲田大学「オンライン併用の対面授業」推進の真意 ブレンド型の効果大、教員支援に全力を尽くす

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コロナ禍の2年間で、教員はオンライン授業の技術的知識を身に付けてきたが、そのレベルにはばらつきがある。教え方にしても、オンライン授業における成績評価方法や学生が積極的に参加するための工夫など、旧来の対面授業にはなかった教育・教授法が求められる。

教える内容については、それぞれの教員が専門領域に関する知識を十分持ち合わせているが、オンライン上にあるオープン・エデュケーション・リソース(OER)を活用することで、教員自身がコンテンツづくりの負担を軽減しつつ効果的な授業デザインが可能になる。こうしたTPACKの観点からの支援を組織的に、教員一人ひとりに届けるのが、CTLTの目下の目標だ。

テクノロジーの導入を4段階で示す「SAMRモデル」でいえば、同大の教員は教室での授業をオンラインに「Substitution(代替)」する段階をクリア。現在は、板書をプレゼンテーション用スライドにするといった工夫やOERの活用を試みる「Augmentation(増強)」、あるいはブレンディッドラーニングの授業デザイン、LMSに蓄積されている学修履歴データを用いた個別最適化された指導を行う「Modification(変容)」に、教員がそれぞれのデジタルリテラシーに応じて取り組んでいる。

今後は、さらに仮想学習環境や拡張現実など、新しいテクノロジーを活用したコンテンツの開発・導入といった学修環境のあり方を「Redefinition(再定義)」する段階に突入していく。学生も教員も誰一人取り残さない教育を実現するためにも、こうした教育DXを全学で推進していくことは、同大にとって絶対的使命だ。

「本学は13年1月に、2032年を見据えた『Waseda Vision 150』を発表、『ネットワークを活用した遠隔・オンデマンド授業環境の整備』や『対話型、問題発見・課題解決型授業への移行』という姿を描いています。効果的な教授方法やテクノロジーの活用を実践していくための研究知見を集積し、適切かつ効果的な授業を実践していただけるよう、全学の先生方を支援していきたい」と森田氏は意欲を見せている。

もはやどの大学においてもDX推進は待ったなしだが、その中でどんな教育を提供していくのかは今後よりいっそう重要になる。新しいテクノロジーの活用や効果的な教授法を身に付けなければ、取り残される教員も出てくるだろう。原則上限60単位というオンライン授業の単位規制が緩和されれば、キャンパスライフが一変する可能性もある。ここにしかない学びをどう構築していくのか、大学の真価が問われる。

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(文:田中弘美、写真:すべて早稲田大学提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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