コロナ禍で病院の経営にはどのような影響が及んだのか。全国の大手医療法人を対象に最新の決算状況を独自調査した。
2020年の初めから感染拡大が始まった新型コロナウイルスは医療機関の運営に計り知れない苦難を強いた。そうした中、病院経営にはどんな影響が及んだのか。
民間病院へ融資を行う福祉医療機構が1月28日に公表した資料によると、コロナ患者を受け入れた病院の2020年度の経常利益率は4.2%と、2019年度の1.5%よりも上向いている。これは病床確保などコロナ対応関連の補助金を含めた数字で、それを除く2020年度の経常利益率はマイナス1.7%だ。病床利用率の低下や外来患者の減少が響いた。
コロナ患者を受け入れていない病院でも、感染対策に対する補助金はあるが金額は小さい。むしろ病床利用率の低下や外来患者の減少影響が大きく、2020年度の経常利益率は前年度より悪化している。
大手医療法人の最新決算を独自調査
では、各病院の経営状況はどうなっているのか。
医療法人の場合、会計年度の終了後、2カ月以内に決算書類を都道府県に届け出なければならない。決算書は各自治体での閲覧又は情報公開請求で内容を確認できる。公開するのは、医療事業の透明性を確保するためだ。
2020年度の医療法人の決算は、2021年後半から出そろいはじめている。そこで今回、東洋経済は決算書類(2020年度)の情報公開請求を都道府県別に実施。2022年1月時点で入手できた220の大手医療法人の決算データから以下のランキングを作成した。
1位の徳洲会は3000億円を超える
医療法人「売上高」ランキング
コロナ禍でも収入が増えた病院は?
医療法人「増収率」ランキング
コロナの猛威でやむをえない事情も
医療法人「減収率」ランキング
収益悪化で債務超過に転落した法人も
医療法人「自己資本比率」ランキング
一定規模以上の医療法人は医療法人会計基準が適用されるため、病床確保の補助金は原則として売上高に計上される。政府はコロナ患者受け入れのために空けた病床に対して補償金(空床補償)を支給している。コロナ対応を行った大手の医療法人では、この空床補償の上乗せで増収となったところが少なくない。
収益が伸びた医療法人の1つ、大阪府の協和会(加納総合病院)は、売上高が78億円で前年度比約9%の増収となった。コロナ患者受け入れのため56病床を整備し、空床補償は7億円ほどあった。だが、協和会の理事長で日本医療法人協会の加納繁照会長は、「コロナ補助金がなければ大幅な赤字になっていた」と話す。
コロナ対応でも減収の病院も
「補助金によって(収益を)保てたが、安心しているわけにはいかない。感染状況が落ち着けば行政から確保病床を減らせと言われる。平時に戻しても、空けた56床の稼働率を上げるには時間がかかる」(加納理事長)と懸念を示す。
一方、同じコロナ患者を受け入れていた病院でも、クラスター(集団感染)による病院閉鎖が響き、売り上げが減った病院もある。最新決算で作成した各ランキングからは、コロナの影響による民間病院の明暗が見えてくる。
そして再度のコロナ急拡大という現実もある。地域医療支援病院である東京北医療センターでは、感染者が減少した2021年秋以降も、コロナ患者のために確保した40床を維持してきた。
東京都からは「第5波」で確保していた病床を縮小し、再び感染者が増えれば2週間以内に増床することを求められていた。だが、看護体制を2週間でコロナ対応に戻すのは難しいことから、病床維持を選んだ。そこに「第6波」が直撃。想定以上の感染拡大に対応するため、ほかの病棟に充てていた人手をコロナ病棟に戻し、体制を整えたという。