2022年3月期に2期ぶりの黒字化を見込む三菱自動車。だが今後の課題は山積みだ。
長いトンネルの出口が見えたのか。
三菱自動車が11月4日に発表した2022年3月期の中間決算(4~9月期)は、売上高が前年同期比55%増の8905億円、営業利益が251億円だった(前年同期は826億円の赤字)。コア市場として位置づけるASEAN(東南アジア諸国連合)や、豪州、ニュージーランドといったオセアニア地域に加えて、北米での販売台数が回復した。
通期の業績見通しは半導体不足による減産影響で、売上高を2兆100億円と従来予想から700億円引き下げた。だが営業利益は従来予想から200億円増の600億円に上方修正。新型車の投入効果もあり、北米などでさらなる採算改善を見込むほか、円安効果も寄与して2期ぶりの黒字を確保する計画だ。
「2022年度営業利益500億円の目標を1年前倒しで達成できる見込みとなった」。加藤隆雄最高経営責任者(CEO)は同日のオンライン会見でそう強調した。
ホンダやスバルなどが半導体不足や新型コロナウイルスによるサプライチェーンの混乱で減産影響に苦しみ、通期の業績見通しを売上、利益ともに下方修正した一方で、三菱自は中期経営計画で打ち出した構造改革が想定以上に順調に進んでいることを示した形だ。
21年3月期はリコール隠し発覚以来の赤字規模
三菱自はカルロス・ゴーン元会長が指揮する日産自動車の傘下になって以降の2017~2019年度ごろ、欧州や中国市場といった巨大市場でシェア獲得を目指す拡大路線へと舵を切った。しかし販売台数は伸び悩み、研究開発費用や人件費などの負担が増大。急激な業績不振に陥り、2021年3月期は最終赤字3100億円を計上した。これは2005年3月期にリコール隠しが発覚し4700億円超の赤字を出して以来の規模となる。
そこで販売台数で2割弱を占める一方で不振が続いていた欧州での新型車開発の見送りや、大型スポーツ用多目的車(SUV)「パジェロ」の岐阜県にある生産工場閉鎖、希望退職の募集などで、2022年3月期の固定費を2020年3月期比で2割削減する計画を進めている。2022年3月期は構造改革効果を通期で前回見通しと比べて31億円(2021年3月期実績と比較すると210億円の改善効果)見込むなど、取り組みの成果が着実に現れつつある。
しかし今回の上方修正は、手放しで喜べるわけではない。販売費用は前回見通しから206億円の大幅な改善効果を見込んでいるが、この大半を占めるのが販売奨励金(インセンティブ)の抑制だ。要因は新型車投入効果などもあるが、減産の影響で在庫が極めて少なくなり、値引きをせずとも売れる状態になっている点にある。
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