円の実質実効レート(物価の影響を除き多通貨間で見た円の実力)は、JPモルガンの算出する日次ベースでは、今年10月20日に2015年6月5日の最安値まであと1%程度のところまで迫った。
日本銀行が算出する月次ベースでは今年の最安値は6月であり、15年6月の近年の最安値まであと4%弱というところである。ただし、10月はかなり円安が進んだので、あと2%程度に迫っていると推計できる。ちなみに、15年6月の安値を下回ると、1972年6月以来約50年ぶりの円安水準となる。つまり、変動相場制に移行する前と同じ円安水準ということになる。
10月28日の金融政策決定会合後の記者会見で黒田東彦日銀総裁は、現在の円相場の水準を「若干の円安でファンダメンタルズの範囲内」とした。しかし、円の実質実効レートがほぼ現在と同じ水準になった15年6月には、「実質実効レートベースで見て、かなり円安になっているのは事実」と発言していたのである。
さらに、15年6月には「これまで円安が日本経済にプラスだったから、さらなる円安でさらにプラスということではない」と発言しているのに、今回は「現時点の円安は日本経済にプラスなのは確実」とした。
実質的にほぼ同じ円安水準なのに評価が異なる理由はわからない。だが、円安は日本経済にとってプラスというのはわかる。日本は経常黒字国で対外債権国であるから、海外子会社の収益増加や海外投資から得られる収益は、円安により円にすると膨らむため、黒田総裁の言うとおり、ネットで見れば確かに経済的にはプラスだと考えられる。
もっとも、ネットでプラスでも、誰にとってプラスで、誰にとってマイナスなのかを考える必要がある。
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