ソフトバンクでは長らく、ほとんどのショップが全機種の頭金を0円にしている。東洋経済が2020年8月以降、不定期に度々行っているソフトバンクショップの首都圏30店舗の調査でも 、95%以上が頭金0円にしていることを確認している。
ソフトバンクの代理店関係者からは「頭金を付けているとソフトバンクから店舗数の拡大を認められないほか、握り(携帯電話大手が任意で代理店ごとに目標の販売台数などを決め、達成すれば代理店に支払うボーナスインセンティブのこと) も設定してもらえなくなるため仕方なく0円にしている」という声が聞こえる。こちらも事実であれば、独禁法に抵触しそうだ。ソフトバンクは端末も含めた安さを最大のアピールポイントに契約数を伸ばし続けている。
背景にドコモの焦り
ドコモの今回の問題の背景には、代理店に頭金0円を指示することでトータルの販売価格(公式価格+頭金)を下げさせ、通信プランの契約者数を増やしたいという焦りがあったのだろう。
ドコモから頭金に関する指示があったとされるタイミングはちょうど、NTTからドコモに副社長として送り込まれていた井伊基之氏の社長昇格が発表された直後だった。ドコモ関係者によると、井伊氏は他社からの乗り換え獲得(MNP)による利用者の奪還を掲げ、檄を飛ばしているという。
代理店関係者からは「最近のドコモはすっかり変わってしまった。契約者数を増やすために、なりふり構わなくなった」と、ため息が漏れる。
ドコモの営業戦略担当部長の鈴木氏は「商戦期なので、ドコモでは特定機種の特定容量について販売実績に応じて支払うインセンティブを設定している。代理店はそれを活用して頭金を下げたのではないかと考えている」と述べ、頭金0円はあくまでも代理店の自主判断だと主張する。
だが、代理店関係者らは、「そのドコモのインセンティブは、他社からの乗り換え獲得について目標設定が課せられ、それを超えられればやっと支給されるもの。一定の数字に届かなければ、頭金を0円にした分だけ泣きを見るしかない」と話す。その上で、「インセンティブの金額はよくても頭金の半分以下だ。こんな条件と引き換えに、こちらから頭金を0円にするはずがない」と話す。
実際、ドコモの内部資料によると、鈴木氏が言う当該機種の期間限定のインセンティブは最もよい成績(ドコモが定めたMNP獲得の目標数に対する達成率70%以上)を収めても1台当たり5000円にすぎない。それより下の成績では達成率70%未満30%以上で3000円、達成率30%未満は0円だ。