トランプ米大統領は中国製動画アプリTikTokの使用を米国で「全面禁止」すると決定。TikTokの親会社バイトダンス(北京字節跳動科技)は米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツの仲介の下、米国、カナダ、オーストラリアとニュージーランドの4カ国での事業のすべて、もしくは一部をマイクロソフトに売却する交渉を始めた。
TikTokは世界中の154の国と地域に普及しており、月間アクティブユーザーは8億人を超える。もしTikTokを失えば、バイトダンスの海外展開は不可能となり、その評価額は大幅に縮小するだろう。
「マイクロソフト以外の企業も買収に躍起になっている」とトランプは語ったが、これはフェイスブックのことだ。バイトダンスにとって、マイクロソフトへの売却は事業提携に当たるが、フェイスブックへの売却は事業を競争相手にみすみす譲渡することを意味する。
トランプは8月6日、大統領令に署名し、9月20日から米国の司法管轄権内におけるバイトダンスとのすべての取引を禁止した。トランプは同時にもう1つの大統領令にも署名し、中国のテンセントのSNSアプリであるウィーチャット(微信)に対しても同じ処置を取った。
もしマイクロソフトとの買収交渉が不調に終われば、TikTokはアップルやグーグルのアプリストアから締め出され、すでにダウンロードされたアプリに対しても米国ではサービスが停止される可能性が高い。
バイトダンスとマイクロソフトの買収交渉が成立したとしても、買収対象のTikTokのみが禁止を免れ、そのほかのサービスはやはりバイトダンスの一部分として世界中で禁止されるだろう。
TikTokは今、世界中で審査の対象となっている。オーストラリアは審査の動きについて明かした後、「TikTokを禁止するべき根拠はない」と表明した。日本では一部の自民党議員のグループが、TikTokが「望ましくない方法で個人情報を漏洩すること」を防ぐために、法的な措置を講じるよう政府に促す提案書を9月に提出するという。
TikTokの海外で最大の市場であるインドから排除され、間もなく第2の市場である米国をも失おうとしている。それでも、バイトダンス創業者の張一鳴は諦めてはいない。最近はヨーロッパに焦点を移し、TikTokの本社をロンドンに置くことにした。
しかし、バイトダンス経営陣に近しい人物が財新の記者に告げたところによると、7月にTikTokが香港での事業を停止した後、ヨーロッパ市場におけるTikTokに対する見方は微妙なものとなっており、ロンドンに本社を置く計画もいったんは中止されたという。
(財新記者:関聡、張而弛、張琪、原文は『財新周刊』8月10日発売号に掲載)
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(https://toyokeizai.net/articles/-/571763)
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