アメリカの労働力の半分近くを占める低賃金労働者は長らく軽視されており、テクノロジー・金融・娯楽といった成長産業分野において、常に高学歴労働者より低く扱われる状況が続いている。1970年代以降、大卒者でない働き盛り世代の実質賃金(物価変動を計算に入れた値)は伸び悩みが続いており、高卒以下の人々の実質賃金は大幅な減少が続いている。
こうした低賃金労働者の多くがCOVID-19(新型コロナウィルス感染症)危機の最前線で活躍している。病院の用務員、老人ホームの介護助手、商品の発送や配達を担う人員、スーパーの店員などだ。
彼らの経済・社会に対する貢献度を評価する向きが遅ればせながらも高まっているため、社会の底辺にいる50%の人々が虐げられている状況をアメリカ社会が今回の動きを機に改善できるかどうかに注目が集まっている。
最低賃金を時給7.25ドルから12ドルへ
社会変革の可能性はあるが、確実ではない。大企業が政治を支配し労組がバッシングを受ける現在において、低賃金労働者側の交渉力(特にマイノリティー)は低下してしまい、その経済力も同じく弱体化した。連邦政府の定める最低賃金は時給7.25ドルだが、実質賃金ベースでみると1968年と比較して実に30%以上減少している。そこで、まず第一のステップとしては最低賃金を時給12ドルに引き上げることが必要だろう。こうすると最低所得者層の収入は増えるが、雇用全体に与える影響は最小限で済むと思われる。
この記事は有料会員限定です。
東洋経済オンライン有料会員にご登録いただくと、有料会員限定記事を含むすべての記事と、『週刊東洋経済』電子版をお読みいただけます。
- 有料会員限定記事を含むすべての記事が読める
- 『週刊東洋経済』電子版の最新号とバックナンバーが読み放題
- 有料会員限定メールマガジンをお届け
- 各種イベント・セミナーご優待
無料会員登録はこちら
ログインはこちら