米国「分断危機」の深層 止まらない抗議デモ

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黒人男性の拘束死をきっかけに格差への不満が噴出。大統領選にどのような影響を与えるのか。

本誌コラムニスト:中村 稔
写真:5月30日、暴徒に襲われたフィラデルフィアのアップルストア。暴動は短期間で収まり、平和的なデモが中心に

その映像はあまりに衝撃的だった。5月25日、米中西部ミネソタ州ミネアポリスで身柄を拘束された黒人男性のジョージ・フロイド氏が白人警官に首をひざで圧迫され、死亡する事件が発生した。

「息ができない」。同氏が何度も訴える姿が市民によって撮影され、SNS(交流サイト)で拡散された。それをきっかけに全米各地で白人リベラル派を含めた抗議デモが広がり、欧州など世界各地にも波及。事件から2週間以上経ってもデモは収まっていない。

一部は暴徒化し、略奪行為で多数の逮捕者が出ている。首都ワシントンDCやニューヨークなど多くの都市で夜間外出禁止令が発令され、州兵が動員された。

ただほとんどは平和的な抗議活動であり、その矛先は今や警察からドナルド・トランプ大統領の強権的姿勢へと向いている。リベラル対保守。11月の大統領選挙を控え、米国社会を分断する亀裂が深まっている。

白人との格差が鮮明

デモ拡大の背景には複合的な要因がある。まず根深い人種差別への怒りだ。白人警官による黒人への過剰な暴力事件は以前から頻発している。デモ参加者は「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切だ)」というスローガンを掲げ、「悲劇を何度繰り返せば気が済むのか」と叫ぶ。

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