「広告の枠にとらわれない想定外の提案をしたい」 博報堂ケトルクリエイティブディレクター 大木秀晃
社会性のあるメッセージや新しい働き方の提案などで、現代の課題に向き合い続けている。いま最も旬な広告業界のクリエイティブの本音。
──国際的な広告賞である「カンヌライオンズ」で2016年に銅賞を受賞。17年にはダイレクト部門(消費者に具体的な反応と行動を起こさせるダイレクトコミュニケーション部門)の審査委員を務めています。以前から国際的な賞に関心があったのですか。
ずっと若いときはカンヌライオンズはよく知らなかったんです。仕事を始めた当初は、販売促進のための商品の「おまけ」の企画ばかりで、広告での世界的なトレンドや評価されている事柄に興味が湧かなかった。自分からは程遠い世界という感覚でした。でも07年のカンヌライオンズの報告会が博報堂社内であって、そこで話を聞いたら、カンヌに行きたくて仕方なくなりました。
──なぜ行きたいと?
このときすでに世界の広告の世界では、人の行動を変えるようなプロジェクトが評価されていたからです。これは昔から自分も関心があったことだったんです。
07年にカンヌのチタニウム賞を受賞し話題になったユニセフの「タップウォータープロジェクト」。米ニューヨークのレストランで、ただで出される水に1ドルを支払い、アフリカの井戸掘りの資金にするキャンペーンでした。これは2つの点で当時の日本と違っていた。1つは企業の営利活動でなく社会貢献活動であった点、もう1つはコミュニケーションの力が評価されていたことでした。「世界の広告業界はこうなんだ」と興味を持ちました。
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