住民投票を求める動きが全国に広がっている。しかし、実施のハードルは高く民意反映に課題は多い。
「建設は計画どおり進める」──。
10月6日、茨城県神栖(かみす)市の保立一男市長(当時)は会見でそう言ってのけた。5日前の住民投票で公共施設建設にノーが突き付けられたにもかかわらず、だ。
神栖市は10月1日に住民投票を行った。争点は市が計画する体育館やプール、音楽ホールなどを含む防災アリーナ。建設費・維持管理費は171億円。財政難と人口減の時代にそぐわない、と住民の過半数が規模縮小を支持した。だが、市長に住民の声は届かなかった。
住民投票の結果は地方自治体の政策に必ず反映されるわけではない。にもかかわらず住民投票は全国で相次いでいる。2015年5月に大阪市で行われた大阪都構想をめぐる住民投票(上写真)など数多く実施されている。
住民投票を求めても実施に至らないことも
住民投票を実施するには多くのハードルがある。実施の動きが強まっても、実際の投票には至らない事例も多い。
一般的な住民投票の流れはこうだ。ほとんどの自治体は住民投票に関する条例を持たないため、まず、住民投票条例を定めることから始まる。制定を請求するには、条例案に加えて有権者数の50分の1以上の署名を集める必要がある。その手続きは極めて厳格だ。
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