有料会員限定

TPP発効でも米国の貿易は盛り上がらない ヒラリー新大統領でも市場開放は望み薄か

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

有料会員限定記事の印刷ページの表示は、有料会員登録が必要です。

はこちら

はこちら

縮小

第2次世界大戦後に米国は世界で「善意の覇権(Benign Hegemon)」を握ってきたとされる。戦前の欧州の植民地帝国や旧ソ連、中国とは違うという考え方だ。たとえば米国は自国市場を開放し、他国の繁栄を手助けしてきた。だが今日、こうした通商の面で米国の覇権から善意が薄まってきている。

オバマ米大統領は「環太平洋経済連携協定(TPP)によって、米国が21世紀の道路交通ルールを起草できる」と語った。しかし米国は事実上、自ら描いた通商協定から去ろうとしているのだ。

米メリーランド大学の研究者が調べたところでは、TPPの文章の半分近くは、過去に米国が結んだ自由貿易協定(FTA)の数々から複製されたもので、この比率はほかのどの国よりも高いという。それなのに米国は他国から譲歩をもぎ取ったほどには自国市場を開放しなかった。

また米国国際貿易委員会(ITC)の報告書によると、TPP発効の効果は2032年の米国の輸入を2%程度押し上げるにとどまるという。輸入増加分は国内総生産(GDP)比で0.2%にすぎない。

TPPによる輸出入押し上げがあまり期待できない基本的な理由は、主要加盟国の農業以外の関税がすでにそうとう低く、仮にゼロにしても大差はないからだ。オバマ政権は他国に、米国市場へのさらなるアクセスを提案できたが、議会がTPP自体の批准を拒絶する可能性があったため、そうしなかった。

最大のものは米国のGDPの約1割を占める政府調達だ。現行の国際的な政府調達協定(GPA)では、米国は連邦政府と37の州政府が調達市場を海外に開放しているにすぎない。調達全体のうち海外勢に開放可能なのは2割だけだ。

14年時点で、米国の政府調達全体に占める輸入の比率は4.6%にすぎなかった。これは日本の4.7%と同程度だが、中国の6.15%や欧州連合(EU)の7.5%よりも低い。

TPP交渉で日本とカナダは都道府県や市区町村による調達を互いに自由化することで合意。オーストラリアやチリ、ペルーもこの互恵協力合意に加わった。しかし、米国はこの提案をすげなく断った。

悲しいことに、自国市場を精いっぱい開放しようとしないのは米国だけではない。TPPはまるで、機会が失われていく物語のようだ。

関連記事
トピックボードAD