経営コンサルタント 大前研一
日立製作所のボトムライン(最終利益)は、持ち駒をどうするかで結構変わる。(優良子会社への出資比率を増やしたり、赤字子会社への出資比率を落としたりなどの)順列・組み合わせで、ボトムラインをよくできる。トップライン(売上高)や収益力が増していないのに、「日立はよくなった」と錯覚しがちだ。
こうした(子会社への出資比率の増減など小手先で業績をよく見せようとする)日立経営陣の体質というものは、昔も今も「上から目線」だから、たぶん治らない。成長しようと思ったら、既存のものを積み上げるだけではダメだ。爆発的な力を持っているものを新たに作り出さないと将来はない。ところが日立には自ら作り出すアンビション(野心)がない。無から有を生むというのが、日立の体質には見当たらない。
日立の大きな特徴はナンバーワンの製品がほとんどないことだ。
東芝には画像診断装置やPOSなど日本一、世界一の製品が少なくなかった。これは東芝がブートレッギング(密造酒造り)の会社だからだ。東芝では、開発費の一部は長らく「社長のポケット」と称して勝手気ままに使えていた。当時の東芝から見ると、今の日立はあまりにも分別がありすぎる。画像診断装置の日立メディコは東芝メディカルシステムズにうんと遅れた国内ナンバー2だ。鉄道車両は珍しく日本一だが、世界的には加ボンバルディアや独シーメンスと距離がある。各国の社会インフラとなっている鉄道事業でトップラインを急速に伸ばしていくのは難しい。
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