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売れる車を造れない 三菱自動車の未来 三菱グループ支援で危機は脱したが

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三菱自動車が1年5カ月ぶりに新型車「コルト プラス」を発売した。2007年末までにさらに11車種を発売する計画だ。しかし消費者の三菱離れは深刻。いくらコストをカットしても、車が売れなければ収益は回復しない。三菱自動車に未来はあるのか。

三菱自動車3つの弊害

設計至上主義で新車開発能力を喪失

「三菱自動車には買いたいと思う車がない」

三菱自動車系販売会社のある社長はユーザーからこう言われることが多いと嘆く。

10月6日、初公判の ため横浜地裁に入る河 添克彦元三菱自動車社 長。裁判の長期化は販 売に悪影響を与える

現在進行している再建計画では、2004年度894億円、05年度1912億円のコスト削減を徹底し、06年度の最終利益黒字化を目指す。しかし、いくらコストカットを加速しても、「黒字化のためには、06年度までに2~3車種のヒット車が必要」(自動車アナリスト)と、車が売れなければ再建計画が達成できないことは言うまでもない。

「ヒット車を出すことができるのか」

これが、三菱自動車存亡の“キモ”だ。しかし、今や国内市場では6カ月連続で販売ランキング上位20モデルにランクインしていない低迷状況が続く。一連のリコール不祥事が影響しているとはいえ、そもそも、ユーザーから「買いたい車がないメーカー」と酷評されている。

三菱自動車はなぜ、ユーザーを魅了するヒット車を出すことができないのか。車造りに根本的な問題があるのか。

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なんとトヨタが評価 三菱の工場は優秀

実は、三菱自動車の生産現場は決して弱くない。

「工場の生産技術は一目置かれるものがありますよ。あのトヨタが認める技術もあります」と、東京大学ものづくり企業経営研究所の藤本隆宏理事長は、三菱自動車の現場生産能力を高く評価する。たとえば、05年度末の閉鎖が決定している岡崎工場は、生産計画の正確性を示す「計画成就率」が72%と、他社平均を上回っている。

また、三菱自動車は現在約20車種のラインナップであるにもかかわらず、国内工場が水島、岡崎、岐阜の3拠点しかない。つまり、少ない工場でたくさんの車を造っているため、多品種、多プラットフォームへの対応という工場のフレキシビリティが整っている。「『岡崎工場を閉めるなんてもったいない』という声をよく聞きます」と藤本氏は工場の強さを強調した。

開発リードタイムを比べてみると、「欧米と韓国メーカーは20~30カ月程度。日本メーカーの平均は18カ月ぐらいで、三菱自動車はそこに遅れていない」(藤本氏)という。

では、なぜ顧客に支持される車を出すことができないのか。

三菱自動車は1970年、三菱重工業から自動車部門が独立して誕生したメーカーだ。「三菱重工は単なる造船屋や機械屋じゃないんだ。日本一のもの造りの会社なんだ」(三菱重工業の牧田與一郎・元社長)という言葉が物語るように、元来、三菱重工出身の優秀なエンジニアが多かった。

久保・中村体制がエンジニアを聖域化

しかし、エンジニア能力の高さがあだとなる。

「設計者(エンジニア)にあらずんば、人にあらず」という言葉が社内で蔓延り、車造りにおいてエンジニアの意見ばかりが優先されるという深刻な企業文化を生み出してしまう。また、エンジニア出身で73年社長就任の久保富夫氏、その久保氏の子飼いで89年社長就任の中村裕一氏が長期政権を築く。特に「開発のドン」とまで呼ばれた中村元社長はワンマン体制を築き、エンジニアの聖域化に拍車をかけた。

「エンジニア至上主義」による車造り、その弊害は甚大だった。

弊害その(1)新技術への怠慢な対応

「エンジニアはベテランになればなるほど、安易な開発ばかりを優先した」(元三菱自動車の設計部門担当者)と言う。

自己を過信し、新しい技術への対応を排除してしまう。優秀であるがゆえに、その絶大な自負心が三菱自動車の技術的進化を止めてしまうというパラドックスに陥った。

他メーカーに先駆けて輸出販売を展開していたホンダは、65年に将来の輸出を見据え、米国における環境法規制の情報収集を開始した。そこで環境対策の重要性を認識し、技術革新を加速させる。それが低公害エンジンCVCCの開発・発売につながった。

トヨタは71年に、電気自動車の研究に着手。90年代には米国市場販売台数を着々と増やして収益を上げ、その傍ら技術研究を重ねた。現在ではトヨタのキーテクノロジーとなっているハイブリッドカーや衝突安全技術「GOA」は、過去の基礎技術研究がなければ登場していなかっただろう。

その一方、三菱自動車は環境、安全対策などの基礎技術の研究を怠った。「(バブル崩壊以降の)15年間がロストワールドになってしまっている。もはや、取り返しがつかないかもしれない」(モータージャーナリストの清水和夫氏)。

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