「必ず解決」いじめは人権侵害として徹底対応する寝屋川市の超本気 出席停止や学級替えを勧告する市長権限も条例化
また、「被害者が転校するという理不尽な事態は本来あってはなりませんが、やむをえない場合は、早期に日常生活を取り戻すことが重要」(担当者)と考え、被害者が転校を希望する場合に限り、上限15万円として転校費用も補助。転校先での制服やかばんなど購入が必要な物のほか、通学のための交通費も支援対象としている。
幸い、同市では法的アプローチに至った事案はないが、「こうした枠組みを用意しておくと、いじめの当事者に『できれば行政的アプローチで解決させていただきたい』と伝えることができ、抑止の力も働きます」と、担当者は言う。
実際、子どもたちは監察課の職員の話を神妙に聞くという。「先生方からも『児童が反省している』といったお話を聞くので、効果はあるのかなと思っています」(担当者)。
また、学校・教育委員会と保護者を仲裁する役割も担うことができているようだ。両者の話し合いでは対立的な構図になりがちで、とくに保護者側が教育現場に対して信頼を失い交渉が進まなくなるケースが少なくないという。
しかし、「われわれは第三者的な立場ですから、間に入ると客観的な話ができて解決に向かいやすい。同じ内容であっても、監察課が対応することで事態が動き、解決につながることもあります」と、担当者は語る。
こうした関与で監察課がいじめに対応した件数は、2019年度が172件、20年度が169件、21年度は146件(21年12月現在)。全件について、1カ月以内にいじめ行為を停止させ、いじめの終結を確認しているという。
監察課は、深く傷ついた被害者やその保護者にとっては、大変心強い存在になりそうだ。一方、加害者のケアについてはどう考えているのか。
「そこはあえて学校と役割分担しています。監察課は現場の人間関係にとらわれず、加害者に対応する。一方、学校は今までどおり学級運営や人間関係の涵養に注力していただく。ただ、もしも今後、被害者にも加害者にも慎重なアプローチが必要な場合には、本市の福祉部局の臨床心理士らと連携していく必要などもあるかもしれません」(担当者)
今後の取り組みについては、「早期発見・早期解決が永遠の課題。また、いかにいじめの情報を広く集められるかといった点もさらに考えていきたい」と話す。
近年ではSNSの普及でいじめは多様化・複雑化しており、教育現場での対応だけではますます解決が難しくなっている。同市の取り組みは1つの事例だが、学校のいじめ問題に第三者が関わる体制は解決策として十分期待できそうだ。同市が主張するように、いじめは人権侵害である。その当たり前のことが当たり前のこととして認識される仕組みづくりを、各現場は構築する必要があるのではないだろうか。
(文:編集部 佐藤ちひろ、画像出所:大阪府寝屋川市監察課ウェブページ)
東洋経済education × ICT編集部
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