注目の不登校特例校「学校らしくない」草潤中の今 ICT活用「授業の生配信」から始める選択肢も

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生徒たちを支える体制も心強い。26名の教職員は、志願した者はもちろん、全員が同校の方針に納得のうえで着任している。また、スクールカウンセラーだけでなく、「心の学校医」と呼ぶ小児科医も生徒の面談に当たっており、不登校生の家庭訪問などを行う市独自の「ほほえみ相談員」や、岐阜市子ども・若者総合支援センター「エールぎふ」とも連携して生徒をサポートしている。

生徒は、こうした環境に居心地のよさを感じつつあるようだ。同校に決まった行事はないが、生徒たちの希望により全校旅行が決まった。12月に日帰りで名古屋港水族館に行く。ある生徒が「私は一度も学校行事に参加したことがないけれど、この学校の友達となら一緒に行きたい」と観光バス会社に直談判したことも後押しとなり、無償でバスを借りられることになったという。

現在、同校には3学年計40名の生徒が通う。開校後の4~7月、授業があった71日間における1日の平均登校率は72.9%、登校しない日もオンライン学習への参加率は61.2%となった。また、入学前は21名が「週に数日の登校から始めよう」と考えていたが、開校後の4月末時点では毎日の登校を考える生徒が27名と過半数に上った。

「登校が最終目的ではないですが、この数字が安心を感じてくれていることの表れならば、1つの成果といえるかもしれません。しかし、現在数名の生徒は学校に足が向かない状況です。すべての生徒が『ありのままの新たな形』になっているとはいえませんが、引き続き一人ひとりの学びのスタイルを尊重していきます」(井上氏)

「まずは授業の生配信」なら始められるのでは?

実は同校の定員40名のほかに、在籍校に籍を置いたまま週1日同校に登校して50分ほど個別の学習支援を受ける「通級不登校支援」の生徒が22名、同じく在籍校に籍を置いたまま週2回ほど各20分の「オンライン支援」を受ける生徒が24名いる。昨年度の学校説明会に参加した児童生徒は222名とあまりに希望者が多かったため、急きょこの2コースを年度途中から導入したという。

22年度の新1年生は13名程度、新2年生と新3年生は若干名募集する予定。今年9月と10月に実施した学校説明会には計117名が参加した。21年度と同様、学校体験会と個別面談での様子、児童生徒および保護者のアンケートや在籍校からの情報などを基に入学・転入の生徒を決定する。「児童生徒の能力や資質で選ぶのではなく、本校の支援の必要度や有効性を総合的に判断しています」と、井上氏は話す。

全国的に不登校の児童生徒は増加している。同校のような体制や環境を整えることは簡単ではないが、同校の取り組みは支援を考えるうえで、ほかの学校でも参考になる点が多いのではないだろうか。とくにGIGAスクール構想の推進によりICTは活用しやすくなったはずだ。井上氏も、こう提案する。

「個別でのオンライン指導は大変ですが、本校のようにまずは授業の生配信をし、『今のところ、わかった?』と声をかける時間を1回でもつくる。これなら始められる学校もあるのではないでしょうか」

(文:編集チーム 佐藤ちひろ、注記のない写真はshimanto/PIXTA)

制作:東洋経済education × ICT編集チーム

東洋経済education × ICT

小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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